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バイヤー日暮日記

2022.07.13

八丁味噌&八丁味噌 @愛知県岡崎市

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バイヤー日暮日記

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こんにちは!日本百貨店バイヤーのヒグラシです。
仕事柄全国いろんなところに行くことが多いのですが、巷では「アイツただフラフラしてるだけなんじゃないのか」という声も…
そんな疑惑を払拭すべく、このコラムでは行く先々で出会った素晴らしい作り手さんやものづくりの裏側なんかをゆるりと紹介しつつ、ちゃんと仕事している感を演出したいと思います!

お久しぶりです…

前回よりだいぶ間隔が空いてしまいすいません。
出張を詰め込み過ぎてしまいコラムが書けない日々でして、担当にお尻を叩かれながらようやくパソコンに向かって、いざ書こうとしても全然筆が進まず、、、誰か「いい言葉僕にちょうだい」って感じだったのですが、ようやく今回アップできましたのでぜひご覧ください!

最強コラボ缶詰第2弾!完成!!

コラム第2回でも紹介しました「みんなの食プロジェクト」(略して「みん食」)。ライバル企業である小売5社のバイヤーがタッグを組んで商品開発をしているのですが、第1弾の「木桶醤油&酢のSABA缶」がとても好評だったので、この度、第2弾も作っちゃいました!

みん食メンバー、左からヒグラシ、大野屋さん、信濃屋さん、F&Fさん、甑屋さん

今回はサバ味噌缶。近頃のサバ缶ブームもあり世の中にサバ味噌缶はあふれていますが、そこは業界屈指のバイヤー集団が作りますので一味違います。なんて手前味噌なことを言っちゃってますが本当に美味しく仕上がりました。

その名も「木桶仕込み八丁味噌SABA缶」

ただの味噌ではなく八丁味噌を使っているのがポイント!パッケージの「八丁味噌&八丁味噌」というフレーズが若干クドい気がしますが、これには理由があるんです。愛知県岡崎市にある「まるや八丁味噌」と「カクキュー」2社の本物の八丁味噌を贅沢にもブレンド。フツーのサバ味噌缶にはない、コクのある深い味わいに仕上げています。

さらに、隠し味として木桶醤油と木桶酢をさらりと使って旨味とキレを出しているところがなんとも小洒落てますね〜。流石第一線のバイヤーが作るだけあって味付けが心憎い!なんてもはや手前味噌&手前味噌な感じですが、自信作なのでぜひ食べてみてください!

今回はそんな八丁味噌を深く知るべく、まるや八丁味噌さんとカクキューさんへダブルでお邪魔しましたっ!

こちらはまるや八丁味噌さん
通りを挟んで向かいにはカクキューさんが

面白いことに2社は旧東海道を挟んで向かいあっているんですね。長い歴史のなかで時にはバチバチ、時には手を取り合い、良いライバル関係を築いているといいます。素敵ですね!

岡崎城から西八丁!

ところでみなさんは八丁味噌をご存知でしょうか?
国内で一般的に流通している味噌のほとんどは、米味噌と呼ばれる大豆に米麹を加えてつくったものですが、八丁味噌は大豆そのものを麹にしてつくる豆味噌と呼ばれるもの。全国的にはちょっとマイナーな味噌ですが愛知県では主流でして、家庭では豆味噌をつかった「赤だし」が飲まれていますし、県内には豆味噌をつくる蔵がいくつもあります。

では豆味噌=八丁味噌かというと、違うんですね。八丁味噌にはちゃんとしたいわれがあって、徳川家康が生まれた岡崎城から西八丁にある岡崎市八帖町にて、江戸時代から老舗2社によってつくられている豆味噌のことを指すんです。もちろんその2社とは、まるや八丁味噌さんとカクキューさんのこと。

木桶、石積み、二夏二冬。

八丁味噌の製法はとても独特。「木桶、石積み、二夏二冬」と言いまして、木桶で仕込み、重石を乗せて二夏二冬、約2年間ほど熟成させて完成します。最大の特徴は何と言っても石積み!仕込み桶の上に大量の重石を積み上げていくんです。

重石を積むのは桶内の水分を均等に行き渡らせるため

その重さはなんと3tにもなります!ただ単に石を積み上げればいいという話じゃなくて、各社それぞれ石積み職人がいて、石の形を見ながら崩れないように積み上げていきます。八丁味噌の仕込み期間は約2年、その間なにがあっても崩れてはいけません。地震の揺れも吸収しちゃうそうで、江戸時代から今まで崩れたことはないそうです。凄い…まさに職人技ですね!

石の顔を見てどこにどう積むか瞬時に判断する

一人前の石積み職人になるには10年はかかると言います。なんだか伝統を感じるスケール感ですね。

ちなみに石には種類があるそうで、外側の大きい「積石」、中から石を支える「中石」、てっぺんでちょこんと乗っている「まんじゅう石」の3種類。なんだか人のタイプみたいで面白いですよね。僕もどっしりとした「積石」か陰で支える「中石」のような漢になりたいと思っていたら、その場にいた人全員、満場一致で「ヒグラシさんはまんじゅう石」と言われました。ちなみに、まんじゅう石もちょこんと乗っている飾りではなく全体のバランスを取っている大事な石なんですよ。石も人も見かけによらないってことですね。

左からまんじゅう石、中石、積石
まんじゅう石にシンパシー

現在石積み製法で八丁味噌をつくっているのは、まるや八丁味噌さんとカクキューさんの2社のみ。この2社の味噌が本物の八丁味噌といわれる理由がここにあります。そうやって完成した八丁味噌ですが、いかんせん固いので桶から取り出すのも一苦労。まるや八丁味噌さんの場合は桶の中に人が入ってスコップで味噌を掘り出すんですよ!

見ているだけで腰がやられそう…

しかし商品になるまでに、これほど手間ひまがかかっているとは…
江戸時代から守り続けている伝統的な製法、言うのは簡単ですがこうやって目の当たりにするとやっぱりモノヅクリへの想いというか覚悟というか、凄みを感じずにはいられませんでした。

こちらの手塚治虫先生の漫画に出てきそうな素敵な方がまるや八丁味噌の浅井社長。当時の仕込み帳をとても大事に扱っていたのが印象的でした。

それはちょっと…

八丁味噌といえば業界を騒がせているある問題がありまして。それに触れないわけにはいかないので簡単に紹介しますね。GI(地理的表示)保護制度といって、国が地方の特産品や地域ブランドを保護する仕組みがあるんですね。ざっくり言うと「夕張メロン」や「松坂牛」などに代表される地域ブランドについて、国が「これは本物だよ!」というお墨付きを与える制度です。

この制度自体は悪いことではないのですが、こと八丁味噌に関しては何がどうなったか、国が「八丁味噌」と認めたのは愛知県で作られる一般的な豆味噌の方で、まるや八丁味噌とカクキューが外されてしまったんです。「ちょ待てよ!」とキムタク世代なら思わず口にしてしまいそうですが、前述のとおり八丁味噌は豆味噌のなかでも、岡崎市八帖町で伝統的な製法によってつくられるものを言うわけで、なんでこんな事になってしまったか驚くばかりです。

「木桶、石積み、二夏二冬」でなくても「八丁味噌」と謳えるように…

実際大手スーパーさんなんかへ行くと「八丁味噌」と書かれたいわゆる普通の豆味噌が置かれているのが実情です。大人の事情も絡んでいるため、あまり突っ込むと怒られそうなのですが、なんだかおかしな話ですよね〜。

そんななかで僕ら小売店にできることはしっかりとしたモノヅクリをしている本物の商品を販売すること。そのために僕らバイヤーが流行りやトレンドに踊らされず、ちゃんとしたモノを選定してくることが大事だなって。そんなことを思いながら帰路につきました。ではまた今度〜♪

最後はみんなで仲良く缶詰ポーズ!

今回のバイヤー一押し!

(高木商店)木桶仕込み八丁味噌SABA缶 ¥398

バイヤー集団「みんなの食プロジェクト」の第2弾!八丁味噌を使ったサバ缶です。八丁味噌のコクのある深い味わいと、銚子港で水揚げされた新鮮な寒さばが見事にマッチ。食べだしたら止まらない絶品缶詰です!

(まるや八丁味噌)無添加八丁味噌 ¥567

「木桶、石積み、二夏二冬」。江戸時代から続く伝統的な製法でつくられた本物の八丁味噌です。コクのある深い味わいが特徴で、味噌汁のほか煮込みうどんやどて煮などの煮込み料理によく合います!

文文

日暮 学日本百貨店バイヤー

大型店「日本百貨店しょくひんかん」の立上げや、旗艦店となる「日本百貨店にほんばし總本店」をはじめ各店のMDを監修。売場に合わせた商品仕入やオリジナル商品の開発を行う。ニッポン各地の「スグレモノ」を発掘するため全国を飛び回る日々。

日本百貨店バイヤー日暮学が出会った日本の“いろいろ”や、ものづくりの裏側、作り手のこだわりなどをピックアップ!ニッポンのスグレモノを見つけるべく全国各地を奔走するバイヤーの日々の日記です。

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