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バイヤー日暮日記

2021.10.06

木桶から生まれた最強コラボ缶詰、ついに完成!

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バイヤー日暮日記

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こんにちは!日本百貨店バイヤーのヒグラシです。
仕事柄全国いろんなところに行くことが多いのですが、巷では「アイツただフラフラしてるだけなんじゃないのか」という声も…
そんな疑惑を払拭すべく、このコラムでは行く先々で出会った素晴らしい作り手さんやものづくりの裏側なんかをゆるりと紹介しつつ、ちゃんと仕事している感を演出したいと思います!

突然のお誘い、いざ福岡へ

コラム2回目にして早くも行き詰まっています…

いやー書くネタがない!というのもコロナの影響で出張がことごとくキャンセルになり…作り手さんに会いに行けないのです。どうしたもんかなと困っていたら、知り合いのバイヤーから福岡のお酢屋さんに行かないかとお誘いの電話が!まさに渡りに船!!

「行きます!いつですか!?」

「明後日」

いやさすがに急でしょうよ…しかも祝日じゃんか。とブツブツ言いながらも先輩バイヤーのお誘いなので断れず。そんな訳で急遽福岡へ行くことになりました。その様子はコラム後半でしっかり触れるとして…ついに…

オリジナル缶詰完成しました〜!!!

前回コラムでチラッとご紹介しましたオリジナルの缶詰ですが…ついに出来上がりました!

その名も「木桶醤油&酢のSABA缶」!!

簡単におさらいしますと、日本百貨店、信濃屋、大野屋、自然食品F&F、こしき屋の小売5社による共同開発で生み出された缶詰です。ライバルでもある小売企業が協力して開発するのは、業界でもとっても珍しいのですが、単純にバイヤー同士が仲が良いのと、「日本の食を盛り上げたいね」というちょっぴり熱い想いも持ちつつみんなで作りました。

何度も打合せや現場視察を重ね

製造は缶詰を作りつづけて60年の高木商店さん。銚子港で水揚げされた脂の乗った寒さばを丁寧に手詰めしています。ただフツーのサバ缶じゃツマラナイネということで、今回日本の伝統的な食文化である「木桶」をテーマに、弓削多醤油さんの木桶仕込み醤油と庄分酢さんの木桶仕込みのお酢を使って味付けしています。

醤油の旨味と酢のキレのある後口がアクセントとなり、とっても美味しく仕上がっています♪

木桶は不思議な未知の世界!?

ところでなんで「木桶」がテーマかというと…

一つは日本の伝統的な文化を大事にしたいという想い。江戸時代までは醤油、味噌、お酢、酒などはすべて木桶で仕込んでいましたが、現在木桶仕込みの醤油の流通量は国内で約1%。効率化の観点からほとんどの醤油はプラスチックやステンレスのタンクで仕込みを行います。 しかも、木桶自体を作ったり修繕したりできる職人も今ではほとんどいない状態。失われつつある日本の文化である「木桶」をしっかり伝えて残していきたいという思いがあります。

現存する木桶のほとんどは戦前につくられたもの

もう一つは木桶が持つ不思議な魅力。どこか謎めいていて単純に面白いんですよね〜。木桶の表面には無数の穴が空いていて、そこに微生物が棲み着いています。「蔵付きの菌」とも呼ばれるこの微生物は醸造される醤油やお酢の味に大きく作用するそうです。ただ、なにがどう作用しているのかは作り手にも分からない部分が多く、まさに未知の世界なんです!なんだかロマンティックじゃないですか!?

例えば同じ原料を使って木桶とタンクで仕込んだ場合、数値上は同じ値でも風味や味わいに明らかに違いを感じることができるようです。さらには、同じ蔵の木桶たちでもそれぞれの木桶によって微妙に仕上がりが異なってくるとのこと。もうロマンティックが止まりませんね!?

木桶仕込みの醤油!

「木桶醤油&酢のSABA缶」に使用している醤油は埼玉県にある弓削多(ゆげた)醤油さんのもの。県産の大豆と小麦を使用し木桶でしっかり長期熟成させているため、香りがよく旨味もたっぷり。市販の醤油に比べコクと味の深みが全然違います。

弓削多醤油さんは、原料の仕入れからこだわり、麹造りから醸造まで自社で一貫して行なっている醤油蔵です。全国に醤油蔵は数あれど、原料からしっかり醸造している蔵は実はあまりなく、多くは協同組合から「生揚げ(きあげ)」と呼ばれる醤油の原液的なものを仕入れて加工しているんです。

弓削多醤油代表の弓削多さん

流石の貫禄。昔やんちゃしてた感がありますね〜。ただ話し始めると気さくでとってもいい人。皆からはゆげぴーと呼ばれ親しまれています。と言うことでゆげぴーに蔵の中を案内していただきましたっ!

蔵に入ると醤油の芳ばしい香りが。絶賛熟成中のもろみがはいった木桶がずらりと並んでいます。原料や仕込み日など桶ごとにしっかり管理されています。中にはエース桶と呼ばれる木桶があってそれで仕込んだ醤油はなぜか美味しく仕上がるというからなんとも面白い!

この蔵で一番新しい木桶が昭和7年のもの。今から90年近く前…なんとも歴史を感じます。

木桶仕込みのお酢!

続いて、コラム冒頭でもふれました福岡にある庄分酢さん。今回の缶詰で隠し味として効きまくっている木桶仕込みのお酢を作ってもらっています。

300年の歴史を持つ蔵で、今では数少ない木桶でお酢を醸造している知る人ぞ知る存在。静置発酵といってじっくりと時間をかけて発酵させる方法で、完成までに約6ヶ月の時間をかけて熟成させていきます。

スーパーなどでよく見る市販のお酢は通常1日〜数日できてしまうというから、その差は歴然。いかに手間ひまかけて作っているかが分かります。しっかり熟成させた分、味ももちろん美味。酢特有のツンとした酸味がなく角がとれてまろやかな味になるんです。

今回缶詰に使用しているお酢は米ではなく酒粕を原料につくる粕酢というもの。長期間熟成させた酒粕からつくる粕酢は米酢に比べると旨味が多くコクもあるんです。それをさらに木桶で熟成させたお酢をアクセントに使っているとは、なんとも贅沢な缶詰です。

酒粕は甕のなかでじっくり熟成させる

そんな訳で、高木商店、弓削多醤油、庄分酢という、素晴らしくてナイスチョイスな作り手さんたちによる、こだわりを詰め込みすぎた缶詰「木桶醤油&酢のSABA缶」が完成しました!!

もちろんオンラインショップでも購入出来ますので、ぜひお試しください〜。ではまた今度!

今回のバイヤー一押し!

(高木商店) 木桶醤油&酢のSABA缶 ¥376

銚子港でとれた脂の乗った大きな寒さばを丁寧に手詰め。弓削多醤油の木桶仕込み醤油と庄分酢の木桶仕込みの酢をベースに味付けしました。醤油の旨みと、酢のキレのある後口がバランスの良い仕上がりとなっています。鯖の旨みをたっぷりと含んだたれまで全部お楽しみください。

文文

日暮 学日本百貨店バイヤー

大型店「日本百貨店しょくひんかん」の立上げや、旗艦店となる「日本百貨店にほんばし總本店」をはじめ各店のMDを監修。売場に合わせた商品仕入やオリジナル商品の開発を行う。ニッポン各地の「スグレモノ」を発掘するため全国を飛び回る日々。

日本百貨店バイヤー日暮学が出会った日本の“いろいろ”や、ものづくりの裏側、作り手のこだわりなどをピックアップ!ニッポンのスグレモノを見つけるべく全国各地を奔走するバイヤーの日々の日記です。

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