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ヒャッカのある暮らし

2023.05.08

好きを諦めない、母のモノ選び/「かぜとね」菅井やすこさん

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子育て誌の編集に携わり、さまざまな親子の暮らしを見つめてきた菅井やすこさん。自身も1児の母になった今、育児中でも好きを諦めないモノ選びや、ライフワークとしてスタートするお母さんのための場作りについて伺いました。

菅井やすこ

編集者、ライター。書店勤務を経て、複数の出版社で雑誌作りを経験後、子育て誌『tocotoco』の編集部に所属。編集長を経て独立し、現在は「かぜとね」としてフリーで活動する傍ら、大学で心理学も学んでいる。1児の母。

好きなものを守りながら、子育てはできる

「やっぱり、どこか諦めたくないんです」

桜がはらはら舞う4月のはじめ、モッコウバラなど季節の草花が芽吹く郊外のマンションの一室へ。目に飛び込んでくるのは壁一面に並ぶ書棚、鮮やかなイラストやお子さんが作った工作。「子どもがいても、自分の好きなものは置いておきたくて」菅井さんが意志をもって暮らしを重ねてきた様子が伝わってきます。

大学卒業後、書店員を経験したのち、憧れていた雑誌編集者に。当時は徹夜もいとわず、ほとばしる情熱でライフスタイルを中心とした雑誌制作に没頭していました。ですが30歳の頃、体調を崩してしまいます。派遣社員となり、これまでの忙しさとは異なる定時退社の日々。ぽっかり空いた仕事後や休日にやっていたこと。それは…。

「作家さんを一冊まるごと取材するリトルプレスを作っていました。やっぱり私は雑誌作りの現場にいたいんだって気づきましたね」

そのタイミングで縁あって子育て誌『tocotoco』に携わることに。

誌面には服を作る人、音を奏でる人など、好きを活かしながら暮らしを楽しむ親子がたくさん。育児が忙しくても、好きなことに触れる時間を大切にしている人々と出会う中で、次第に育児観が変化していきます。

「それまではなんとなく『母になったら色々と諦めなきゃいけないんじゃないか…』って感じていたけど、覆してもらえました。私も好きなものを守りながら、子どもを育てよう。子どもは何よりも大切ですが『母』という役割の前に『私』がある。私であることを諦めなくてもきっと大丈夫って思えたんです」

私も子もうれしい、モノ選び

現在、菅井さんは3歳の男の子のお母さん。音楽制作を手がけるパートナー、陶芸家や写真家など身近にものづくりに携わる人がいるからこそ「作り手が分かるものを使いたい」という想いが人一倍あります。

「人の跡や手ざわりがあるものが好き。制作の苦労や喜びを肌で感じているからこそ、子どもにも『○○さんが作ったんだよ』と言えるものにふれてほしい。だけど…」

「実際、育ててみて分かったのは、プラスチックなど実用性重視のものもすごく役立つんです。駄々をこねていたのに、スーパーで買ったスポンジと一緒ならお風呂入るとか(笑)だから親の価値観を押し付けて子どもの選択肢を狭めたくないな、と。たとえば作家ものの器も『そういえば親が使ってたな』っていつか思い出すくらいでいいかなって。こだわりすぎなくなりました」

最近は、自身の好みを残しつつ子どもも日常使いできるものを探すのが楽しみ。その試行錯誤がモノ選びの幅を広げています。

「これまでは木の器をよく使ってきました。丈夫で割れないので、使いやすいんです。離乳食の頃から愛用しており、いい風合いが出てきました」

(左・中央)木の器 (右)業務用の器

「木の器に加わったのが、業務用の器です。どっしりしているから簡単に落とせないし、強度があるので少々ぶつけても大丈夫。大量生産品であっても、その中でいいと思えるものを取り入れるようになっています」

使い込むほど喜び増す、日常使いのかばん

日本百貨店でも、好みと実用性を兼ね備えているものをチョイス。毎日愛用するほどお気に入りになったのは『V.D.L.C』の舟形トートバッグです。岡山・倉敷の地で100年以上続く製法で織られた帆布のかばんはふっくら柔らかで日常使いにぴったり。

「本当に感動しています。収納力、マチの広さ、肩にかけた時のフィット感など、使いやすさが凝縮。ちょっと近所へ買い物に行く時や子どもとのお出かけなど、日々使っています」

もともと気兼ねなく入れられるリュックを使っていましたが、お子さんの成長に合わせて荷物も減ってきたこの頃。必要なものだけ潔く入れたい、でもいざという時の安心感は欲しい、そんな菅井さんのニーズに応えてくれるかばんです。

「小ぶりに見えて、思ったよりマチが広いんです。携帯、ポーチ、ハンカチ、財布、ミニカーなどあれこれ入れてもまだ余裕があります。深さがあるので水筒もすっきりおさまります」

そう言いながらさらっと肩にかけた時のお似合いさったら。手持ちもかわいいけど、肩かけがおすすめだそうです。

「子どもといる時は、両手をあけておきたいですよね。肩紐に長さがあるからもたつかず肩かけできるし、底まで手が届くので荷物をさっと取り出せます」

『V.D.L.C』のトートバッグは、服になじむシンプルな佇まいが魅力。いくつかの色からナチュラルな生成りを選んだのは、風合いの変化に愛着を抱けるから。

「ガシガシ使って、洗ってくたくたになって、味になっていく。生成りならではの暮らしの跡が残っていくのが楽しみなんです」

お母さんが自分の好きと出会える場所を

昨年会社を退職し、新たなスタートを切った菅井さん。編集業に加え、お母さんのためにできることを、と学びを深めているのが表現アートセラピー。それは、アート表現を通じて、心と体を癒やし、本来の自分を再確認していく取り組み。

「私自身、育児やコロナ禍で、何かを見失っている感覚があって。慌ただしさに流され『何が好きだったっけ?』とわからなくなることも。子育てで心が疲れているという周囲の話を聞くことも増えましたし、自分もみんなもケアできる場を作りたいと思っています」

ママになっても、自分らしくありたい。だけどままならない日も当然あります。でも童心に帰ってものを作ったり、絵を描いたり。創造することで、自分の内面にふれ、見つめ直せたら。

「お母さんである前にみんな一人の人間。少しでも自分を取り戻す時間があれば、日常に戻っても、前を向いて生きていけると思うんです。私も子育て真っ最中なので、お互いがんばろうって言い合える場を作れたら」

フィナンシェと赤ちゃん番茶もお気に入りでした

インタビュー中、菅井さんが何度も口にした「跡」という言葉。つい、見落としてしまうくらいささやかだけど、たしかにそこに在るもの。そんな跡に意識を向け、慈しむことが、自分自身としてみずみずしく生きるヒントになるように感じました。

今回のヒャッカ

SWIS 舟形トートバッグM

SWIS『V.D.L.C』の帆布は、デニムの産地として知られる岡山県の倉敷帆布製造元で、百年以上前から続く昔ながらの“シャトル機”で織られています。歴史ある倉敷帆布で職人の手仕事によって作られた丈夫な鞄は、「日常使い」ということを真剣に考え、軽くて柔らかで、洗うことのできる、使い手の視点から生まれました。使えば使うほど、味がでてくる帆布の鞄。是非その変化をお楽しみください。

たかはしさんのフィナンシェ 6個入

岩手の山奥にある、家族だけで営む小さな菓子店。原料にこだわり、30年以上変わらぬレシピで手焼きしたフィナンシェは、ハッとする美味しさ。地元のみならず全国にもファンが多い。たっぷりのバターとアーモンドを使い、低温でじっくり焼き上げることで、香ばしく、しっとりもっちりの食感に仕上げています。 「ひとくち食べておいしさに感動。味により食感が違うのも楽しい。アーモンドは外のさくさくと中のしっとり感の絶妙なバランスが◎。家族経営で長く作り続けられていることも魅力です(菅井さん)」

近江 赤ちゃん番茶ティーバッグ

カフェインがほとんどなく、香ばしさと甘みが特徴の番茶です。 「ティーバッグ1袋で1~2リットルは作れるので、子どもと一緒にたっぷり飲める点が良かったです。息子も美味しかったようで「お茶ある?」と聞いてくるように。水出しもできるので、寝る前に仕込めば朝出来上がっていて楽ちん(菅井さん)」

文文

七緒写真と文

アイドルからライフスタイルまで幅広く撮影。飾らない一瞬を切り取り、写真と文を組み合わせた情緒ある表現に定評がある。著書3冊、代表作に女優・前田敦子を毎月撮り下ろす「前田敦子の“月月”」など。

暮らしを楽しむあの人が選ぶモノとは?日本百貨店でお買い物を自由に楽しみ、リアルな使い心地を語ってもらう「ヒャッカのある暮らし」。モノ選びを通して浮かび上がる人生観もお楽しみください。

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