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バイヤー日暮日記

2022.08.05

カワイイだけで大好きさ/上ボシ武内製飴所@青森

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バイヤー日暮日記

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こんにちは!日本百貨店バイヤーのヒグラシです。
仕事柄全国いろんなところに行くことが多いのですが、巷では「アイツただフラフラしてるだけなんじゃないのか」という声も…
そんな疑惑を払拭すべく、このコラムでは行く先々で出会った素晴らしい作り手さんやものづくりの裏側なんかをゆるりと紹介しつつ、ちゃんと仕事している感を演出したいと思います!

映えるって何かね。

先日テレビに出まして。

しかも一日密着していただくという何だか有名人にでもなったかのような出来事がありました。普段あまり知られていないバイヤーの仕事を紹介する企画で、朝から晩まで丸一日密着していただき、作り手さんとの商談風景や製造現場を視察する模様など12時間くらいみっちりと取材してもらいました。

ロケバスというものに初めて乗りました

しかし当日放送を見ると10分足らずにバッサリ編集されていて、勝手に情熱大陸やセブンルール的な感じを想像していたので軽くショックを受けていたのですが、確かに思い返すと格好いいマイルールも持たず、気の利いた名台詞も言わずにフラフラと仕事をしていますし、そもそも家にテレビがないし…。テレビ映えする仕事ってなんだろう?と悩んでいる今日この頃です。

さて、気を取り直して今回ご紹介するのは、僕とは打って変わって映えるやつ…
青森県にある上ボシ武内製飴所さんのこちら!

かわいい〜

金魚の形をしたスーパーキュートなこいつ、ゼリーなんです。その名も「金魚ねぶたゼリー」。可愛い金魚の包みを開くとゴム風船にまんまるの形をしたゼリーが入っていて、爪楊枝で刺すとプルンとゼリーが出てくる仕組みです。なんで金魚の形なの?というと、青森にはねぶた祭りという有名なお祭りがありますよね。その期間中に街のいたるところに金魚の形をした提灯「金魚ねぶた」が飾られるんです。

それをモチーフにしたゼリーで、味はりんご、カシス、巨峰の3種類。夏らしいカラフルな包み紙と金魚すくいをイメージしたかわいいパッケージは日本百貨店オリジナル!流石、買いたくなるツボを抑えてるね!!

左から巨峰、りんご、カシス味

作っているのは青森にある上ボシ武内製飴所。江戸時代から続く老舗の飴屋さんで、青森県民の思い出の味「津軽飴」のほか、県産の果物をつかったお菓子を作っていて地元の方から愛されています。今回はそんな上ボシ武内製飴所さんにお邪魔しました!

素朴で優しい味の「津軽飴」

この日は津軽飴の製造風景を見せてもらいました。到着すると社長がまだかまだかと待ち構えていて、早く作りたくて仕方がない様子。それもそのはず、普段は朝8時から製造するようですが、この日は朝が苦手なヒグラシに合わせて10時まで待ってくれたとのこと。
(すいません…)

工場にはいくつも銅釜があって津軽飴の他に羊羹やゼリーも仕込んでいるため、室内の熱気と湿度はかなりのもの。少しいただけで汗びっしょりになります。

社長の写真を何枚か撮りましたが全て目を閉じていました…すいません…

津軽飴は青森のソウルフード的な水飴で、江戸時代から作られている歴史のあるものなんです。でん粉と麦芽をじっくり煮詰めることで甘さを引き出していて、添加物はもちろん、砂糖も使っていないので優しい甘さが特徴。南部煎餅に挟んで食べたり、調味料として砂糖の代わりに煮物に入れたりと使い方はいろいろ。砂糖が貴重だった時代から現在にいたるまで地元青森の人に愛され続けている天然の甘味料です。

飴の垂れ方で固さを確認する

津軽飴を作れるのは社長だけ。固すぎてもダメだし緩すぎてもダメ。ちょうど良い柔らかさに仕上げるには長年の経験や勘が必要とされます。夏は固め、冬は柔らかめに煮るそうですが、その日の気温や湿度に合わせて火加減や時間を微妙に調整しているため、出来上がるまで釜につきっきりで目が離せません。

案内してくれた武内社長は9代目、なんと2歳の頃から津軽飴の製造を手伝っていたという逸話が!当時は薪で焚いていてその手伝いをしていたという。凄い…なんか偉人の幼少期のエピソードみたい…

釜炊きが終わったら飴が冷めないうちにレトロな缶に詰めていくのですがこれも社長の仕事。慣れた手つきで計量して缶に注いでいきます。「ちょっと持ってみな」と言われて持ったら、熱いっ!釜の火を止めて30分以上経つけど、まだまだ熱い。熱いって先に言ってよ。笑

金魚の包みはもはや職人技!

さて、社長が津軽飴をつくる傍らでは冒頭でご紹介したかわいい「金魚ねぶたゼリー」が作られていたのですが、津軽飴の製造に夢中になりすぎて、ゼリーを作るところを見忘れていました!急いで見に行くと、ちょうどゴム風船にゼリーを詰めているところ。

動画で紹介出来ないのが惜しいのですが、コロンコロンとゴムに詰められた、まるいゼリーが機械から出てくるのがなんとも面白い。おもむろに渡されたゼリーを持つと出来たてなので熱いっ!だから先に言ってよ!笑

金魚ねぶたゼリーですが、金魚の柄の包み紙がとっても可愛いですよね。ただこれを包むのは実はかなり難しいんですよ。上ボシ武内製飴所さんには包み職人のお姉さんたちがおりまして、日々ものすごいスピードで包装しているのです。

包み職人のお姉さんたちに包み方を伝授してもらい、いざチャレンジ!

ヒグラシもチャレンジしましたがこれが想像以上に難しい。もともと不器用なのもあるのですが、途中でゼリーがするりと落ちたり、尾びれの形が綺麗に出なかったりと、どうやっても金魚になりません。

なんか玉ねぎみたいな形に…記念にもらいました

津軽飴もしかり金魚ねぶたゼリーもしかり、今回上ボシ武内製飴所さんを視察して感じたのは、飾らないけど丁寧なモノヅクリをしているということ。それともう1点、バイヤー的には見逃せないポイントがあります。それは、工場が綺麗なこと。建物自体は古く、設備も決して新しいわけじゃないけど、隅々まで掃除が行き届いていました。見学した際も、作業が終わってからかなり長い時間をかけて機械を掃除していたのが印象的でした。

美味しい料理屋さんのキッチンは綺麗なことが多いように、良い商品を作っている作り手さんの工場は綺麗なことが多いんですよね。きっとそういった所にモノヅクリへの姿勢が出るのでしょうね。なんてバイヤー風なことを思いながら帰路につきました。ではまた今度!

恒例の集合写真ですが社長はやはり目をつぶっています…すいません…

今回のバイヤー一押し!

(上ボシ武内製飴所)金魚ねぶたゼリー(りんご・カシス・巨峰) 3個入 ¥740

青森ねぶた祭の期間中、街のいたるところで飾られる「金魚ねぶた」をモチーフにした、包み紙がとっても可愛い一口サイズのゼリーです。3個入りはまるで金魚すくいで捕まえてきたかのようなパッケージ。プチギフトにオススメ!

(上ボシ武内製飴所)金魚ねぶたゼリー(りんご・カシス・巨峰) 8個入箱 ¥1,944

手土産やギフトには8個入がオススメ!専用の箱を開けると可愛く整列した金魚たちに思わず笑みがこぼれます。

文文

日暮 学日本百貨店バイヤー

大型店「日本百貨店しょくひんかん」の立上げや、旗艦店となる「日本百貨店にほんばし總本店」をはじめ各店のMDを監修。売場に合わせた商品仕入やオリジナル商品の開発を行う。ニッポン各地の「スグレモノ」を発掘するため全国を飛び回る日々。

日本百貨店バイヤー日暮学が出会った日本の“いろいろ”や、ものづくりの裏側、作り手のこだわりなどをピックアップ!ニッポンのスグレモノを見つけるべく全国各地を奔走するバイヤーの日々の日記です。

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