日本百貨店

ヒャッカのある暮らし

2021.09.08

人を感じる、もの選び。/「proto器とタカラモノ」店主・樋口嶺

ShareFollow us

ヒャッカのある暮らし

ShareFollow us

愛情とこだわりを持ってものを選び、心地よく使う人を紹介する「ヒャッカのある暮らし」。第1回に登場するのは器を中心としたセレクトショップ「proto 器とタカラモノ」店主の樋口嶺さんです。

Proto器とタカラモノ樋口 嶺

「proto 器とタカラモノ」店主。大学卒業後、日本各地の工芸品や食を取り扱う店舗勤務を経て、2017年に同店を立ち上げ。物語とともにものを届けることを信条としている。

Address:東京都台東区蔵前4-10-12 第一精華ビル2F Tel:090-6931-8779

物語ごと、届けたい

昔ながらと洗練されたものづくりが交差する東京・蔵前。築60年という趣あるビルの階段を上がった先に「proto 器とタカラモノ」はあります。静謐感をまとった白の空間にテンポよく並ぶ色とりどりの器。足を運ぶたび「今日はどんなお気に入りに出会えるだろう」と胸が高鳴ります。

樋口さんが「proto 器とタカラモノ」をオープンしたのは2017年。学生時代の世界一周経験から日本のものづくりの魅力に気づき、日本の工芸品を扱う店に就職。休日、ふらっと立ち寄った日本民藝館で熊本・小代焼の湯呑みと出会い、器の世界に引き込まれていきました。

「それまで器にお金をかけたことがなかったので買うかどうかすごく悩んだことを覚えています。でも店員さんが丁寧に制作過程や歴史を教えてくれて。思い切って買ったら湯呑みを使うたびに話を思い出して、単なるものが愛用品に変わっていったんです」

物語性も含め、器というものに惹かれた樋口さん。いざお店を構える時、主軸にしたのは個人作家たちでした。実際店内には他で目にすることのない新進気鋭の作家による器や一点物が多く並びます。

「人気作家のものはいろんなお店で手に取ることができますが、僕はせっかくならお客さんが見たことないものを置きかった。だって同じラインナップじゃつまらないじゃないですか(笑)」

独立してたった2ヶ月の陶芸家・中根楽さんの器

「あと自分もまだまだ未熟なので、若い作家と対話して共に成長していこうと思っています。だからたとえば作品を仕入れる時はできる限り会いますし、制作状況を定期的に電話で伺うなど寄り添うよう心がけています」

商品一つひとつに自ら書きおろしたコメントを添えたり、インスタライブを定期的に開催したり。ものづくりの背景にある想いごと届ける姿も印象的です。

「そうすれば使う時に作家や僕のことを思い出して、目の前のものの価値が増すかもしれない。100円で何でも買える時代だからこそ、人となりが思い浮かぶものを使う奥深さを知ってほしい、昔の僕のように」

仕事モードに切り替わる“朝抹茶”習慣

そんな樋口さんの「ヒャッカのある暮らし」は開店前に抹茶を点てること。「あまり力まず気楽な感じでやっています」と前置きしつつ、その理由を聞かせてくれました。

「仕事モードに気持ちを切り替える儀式として抹茶を点てています。お湯を沸かし、抹茶粉をさじにすくい、点てて、抹茶碗で飲む。一見手間に思えることをあえてすることで『さあ今日を始めよう』とスイッチが入ります」

日本百貨店で取り扱う抹茶にはさまざまな種類がありますが、樋口さんが愛飲しているのは滋賀県・かたぎ古香園の「朝宮抹茶・翆峰」。無農薬栽培によるおいしさはさることながら、決め手はやはり人でした。

「抹茶って選ぶのが案外難しい。詳しいわけではないから区別が付きづらくて。その中で『朝宮抹茶・翆峰』を好きなのはお茶づくりの情熱にふれられたから。生産者がインタビューなどで信念を積極的に語っていて、愛着がわきました。朝のひととき、作り手に思いを馳せられるってなんだかうれしいんですよね」

「両手で飲むことで体にすうっと入ってくる」と樋口さん

樋口さんの真ん中にはいつだって人の存在があります。だから使うたび愛着がわき、愛着あるものに囲まれることは日々を暖かなものにしてくれるでしょう。効率やスペックだけにとらわれないもの選びを今日から真似してみたくなりました。

今回のヒャッカ

「朝宮抹茶・翆峰」かたぎ古香園

日本最古の茶産地・滋賀県朝宮にて「より安全でおいしいお茶を」という信念のもと、全国でも珍しい無農薬栽培を実現した抹茶。

文

忠地 七緒フォトグラファー/ライター

アイドルからライフスタイル誌まで幅広く撮影。飾らない一瞬を切り取り、写真と文を組み合わせた世界観のある表現に定評がある。2021年雑誌『あわい』出版。東京・清澄白河在住。

一つひとつのものが暮らしを形作るとしたら、楽しくちゃんと選びたい。「ヒャッカのある暮らし」では愛情とこだわりを持ってものを選び、心地よく使う人のスタイルを紹介します。日々のお買い物の小さなヒントとしてお楽しみください。

その他の特集