もののけアーティストが日本百貨店でお買い物するとしたら?もののけや妖怪を表現としたアートを生み出す谷村紀明さんに、ユニークな人生観や気になるヒャッカについて教えてもらいました。
谷村紀明
クリエイティブディレクターとしてブランディング、コンセプト開発、コミュニケーションデザインなどを手がける一方、もののけアーティストとしても活躍。代表作に『てんぷら妖怪 カプセルトイ』『ウルトラマン55周年記念 ウルトラ怪獣もののけ絵巻展』など。
Web:honnow-tokyo.com Instagram:@mononoke_artist
もののけアーティストの人生観
もののけアーティストという唯一無二の肩書で、もののけや妖怪をテーマにアート作品を手がけている谷村紀明さん。お会いするなり、最近ゲットしたARで遊べるカードゲームを披露してくれて、子ども心そのまま大人になったようなチャーミングさを感じます。
お寺や神社が多い京都で生まれ育った谷村さんは、小さな頃から狛犬や龍などのデザインフォルムが好きで、よく絵に描いていたそう。それぞれから発せられるメッセージを感じるうちに、どんどん魅力に取り憑かれ、今の活動へとつながっていきました。
「地球上に存在する“もの”に宿るエネルギーを咀嚼し、楽しく表現するのがもののけアーティストです。たとえばウルトラ怪獣を泥で描いた絵巻で表現したり、てんぷらに扮した妖怪のカプセルトイを作ったり。もののけは漢字だと“物の怪”。僕にとっては妖怪やお化けに限らず、自然や食べものなど世の中にあるすべてのものがもののけなんです」
たとえば料理の見た目からインスピレーションを得て、アイデアをふくらませることも多いのだとか。
「ある日、天ぷらを食べていた時、妖怪に見えたんです。おばけはを
遊び心をもって視点を変えることで、新たな付加価値を生み出すのが谷村さん流。中でも大切にしているのは“陰”に光をあてること。
「子どもの頃、カプセルトイの空カプセルをめがねにして遊んでました。ゴミと呼ばれるものも視点を変えればおもちゃになる。多分、自分を重ね合わせているんやと思います。僕、家事とかできないし、学校の成績悪かったけど、クリエイティブでは役に立てている。はみ出しものでも、別の形で表現すれば活かせるんじゃないかって」
“じゃないほう”をあえて楽しむ
今回、谷村さんが日本百貨店で選んだヒャッカには共通点があります。それは本来捨てられてしまうもの。メインの影に隠れてしまう“じゃないほう”の魅力を見抜き、ユニークな切り口で商品化された逸品です。
「たとえばふしがなければそうめん自体作れないわけだから、めっちゃ重要。捨てておしまいではなく新しい価値を見出す点が僕のモットーと重なりました。全部おいしいし、安いし、手軽だし、もっと早く知りたかった(笑)」
それぞれの食べ方を伺うとさすが!アイデアがぽんぽんと出てきます。
「『ふしめん』はゆでてうどんとして食べました。味噌汁の具として入れてもいいし、鍋の締めにざざーっと入れてもおいしい。めんが短くて、喉につまらせる危険がないので子どももお年寄りもとっても食べやすいです」
「『いか飯になれなかったいか』は炊き込みご飯にして、翌日おにぎりにしました。噛めば噛むほど味が出てくるのでご飯が進みます。不揃いないかがかわいくて『何に見える?』って子どもと話しながら楽しく食べました」
訳ありだってはみ出しものだって、視点を少しずらすだけで、面白いものに化ける可能性がある。幼い頃、空に浮かぶ雲がいろんな形に見えたように、遊び心を持つだけで日常がユーモアあふれるものに変わるかもしれません。
そんなこんなに思いを馳せながら今回のヒャッカを楽しんでみる。それはすっかり大人になってしまった私たちだからできる“遊び”のような気がしました。
撮影協力:KLAMP STUDIO
バンダイナムコグループ/株式会社アートプレスト内にある造形室。フィギュア原型制作を主軸とし、オリジナル商品・デザイン・企画・ディレクションを通じて「楽しい」を創るスタジオ。
今回のヒャッカ
忠地 七緒フォトグラファー/ライター
アイドルからライフスタイル誌まで幅広く撮影。飾らない一瞬を切り取り、写真と文を組み合わせた世界観のある表現に定評がある。2021年雑誌『あわい』出版。東京・清澄白河在住。
Web:naotadachi.com Instagram:@naotadachi
暮らしを楽しむあの人が選ぶモノとは?日本百貨店でお買い物を自由に楽しみ、リアルな使い心地を語ってもらう「ヒャッカのある暮らし」。モノ選びを通して浮かび上がる人生観もお楽しみください。