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バイヤー日暮日記

2021.12.17

こだわりが過ぎる!究極の甘納豆!/石橋製菓 @福岡

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バイヤー日暮日記

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こんにちは!日本百貨店バイヤーのヒグラシです。
仕事柄全国いろんなところに行くことが多いのですが、巷では「アイツただフラフラしてるだけなんじゃないのか」という声も…
そんな疑惑を払拭すべく、このコラムでは行く先々で出会った素晴らしい作り手さんやものづくりの裏側なんかをゆるりと紹介しつつ、ちゃんと仕事している感を演出したいと思います!

若者の心も掴む!?ニューエイジ甘納豆

バイヤーという職業は全国色々なところを飛び回って買い付けてくるイメージがあるかと思うのですが、コロナの影響でここ1年半くらいはほとんどどこへも行けず、お家でオンライン商談したり作り手さんと話したり。もともとインドア派なこともあり、すっかり在宅バイヤーを決め込んでいました。

そんな折、福岡へ行く機会があったので、どうしても寄りたかった作り手さんを訪問しました。福岡県久留米市で甘納豆を作っている石橋製菓さん。ここの甘納豆は僕も大好きでいろんな人にオススメしまくっています。

ほっくりとした白花豆ときな粉の相性抜群な「きなこ花豆」

甘納豆というとお爺ちゃんお婆ちゃんのおやつというイメージが強いせいか、若い子にオススメしてもイマイチ反応が薄いんですよね。「はあ。甘納豆ですか…」みたいな。

そんなキミにこそ、この甘納豆を一度食べてみてほしい!!

実際石橋製菓さんの甘納豆は日本百貨店でも老若男女幅広い層から支持されていて、若いスタッフにもとても人気があるんです。上品な甘さで豆の風味もしっかりと感じることができ、何よりもほっくりとした食感がたまらないのです。僕自身も大ファンでベスト・オブ・甘納豆だと思っています。

今回はそんな石橋製菓さんの甘納豆の美味しさの秘訣を探るべく、製造現場にお邪魔しました〜♪

3代目の石橋正浩さん(右)

「甘納豆職人」というと寡黙で無骨なお爺さんを想像してしまいませんか!?かくいう僕も、初めて石橋さんにお会いした時に、てっきり柄本明みたいな職人が出てくると思っていたら、若くて爽やかなイケメンが出てきて驚いた記憶があります(笑)。

ただこの石橋さん、見た目は爽やかですが、とてもストイックでそこまでこだわるか!というくらい甘納豆作りに対して熱い男なんです。

創業以来、直火釜炊きにこだわる石橋製菓さん、工場のなかには30個以上の釜がずらりと並んでいます。いざ工場に入ってみると、「あっつ…(汗)」。温度計をみてみると室内の温度は30℃以上。釜に火をかけているため温度も湿度もとても高い。それでもこの日はヒグラシが邪魔するからということで、火にかける釜の数を半分以下にしてくれたよう。フル稼働時の室温はなんと40℃を超えるという。

豆の良い香りと暑さでぼんやりしている僕を尻目に、石橋さんがテキパキと仕込んでいます。ほとんどの工程をほぼ一人でこなしているというから驚き。

井戸水で洗った豆を引き上げる石橋さん。重さはなんと50kgを超えるという…
笑顔で話しながらも自家製の蜜を仕込む手は休めない石橋さん

ここまでやるのか!こだわりが過ぎる製造工程

何を隠そう石橋製菓さんの甘納豆、完成までに5〜7日間もかかるんです。この時点でもう驚きですよね。他社の甘納豆は1日で作ってしまうことも多いのでその差は歴然。「豆を煮る、蜜をつける、乾かす、砂糖をまぶす。」甘納豆の製造工程はいたってシンプル。それだけにいかに丁寧に作るかで大きく味が変わってきます。

豆を煮る前に…

まず、煮る前に豆を一晩水に浸けます。これは豆を柔らかくするためで、この工程を省くと豆が割れたり硬くなったりして上手くいきません。

そして豆を煮ていくのですが、これがまた大変。数時間煮たら一度水で洗って、今度は別の釜の新しいお湯でまた煮ていきます。これはアクが豆に入らないようにするためで、ひとつの豆を煮るだけでも何度も釜を変えていきます。ちなみに、石橋製菓さんは製造工程の中でたくさんの水を使用するのですが、豆を煮るときも洗うときも井戸水を使用しているんだとか。なんとも贅沢!

豆煮は時間とタイミングの勝負!

さあ、いよいよ豆を煮ます。この後の蜜漬け工程で豆が硬くなるのを考慮して絶妙な柔らかさに仕上げなければなりません。

針を使って硬さをチェック

豆に針を刺して硬さを確認、引き上げるタイミングを見極めます。ヒグラシも試しましたがサッパリ分かりませんでした。(そもそも針が豆に刺さっていたかも怪しい)

蜜漬けがポイント!

特にこだわっているのが蜜漬け。最低でも2日間、長いものだと5日間かけて行います。この間、何度も蜜を漬けていくのですが、初めは糖度の低い蜜を使い段々と高くしていくんですね。そうやって豆の中に蜜をじっくり浸透させていきます。いきなり糖度の高い蜜を使用すると豆が硬くなって風味が飛んでしまうため、ゆっくりと何度もつけていきます。

実はここが一番甘納豆の味の差を生み出すところで、バイヤー的には見逃せないポイント。回数を分けて徐々に糖度を上げて蜜漬けした甘納豆は風味が全然違います。食感もふっくらしていて豆の香りがよくとっても美味しいんです!!

マニアックな話ですが、1回の蜜漬けで終わらせるか、何回蜜漬けをして仕上げていくのか。ここは商談の際にもツッコンで聞いたりします。当然回数が増えるほど完成までにかかる日数は多くなりますが、味も風味も良くなります。

そして乾燥

そうして丁寧に蜜漬けされた豆にすぐ砂糖をまぶしたいところですが、焦らずじっくりと乾燥させていきます。ここでの乾燥は、乾燥機などを使わずに自然乾燥。地味ですが意外に大事な工程でして、よく市販の安い甘納豆を買うと砂糖が溶けてベチャッとしてませんか?あれは乾燥が足らず水分が出てきちゃってるんです。そうならないように石橋さんの甘納豆はゆっくりしっかり乾燥させています。そして仕上げに砂糖をまぶしてついに完成!

いやー完成までに想像以上に時間がかかっていてビックリ。しかもその間、火加減を調整したり豆の状態を確認したりタイミングとの勝負なので目が離せません。お話を伺っているときでも、10分置きくらいに「ちょっと確認してきます」と言って豆の状態を何度もチェックしに行く石橋さん。

大変じゃないですか?と聞くと意外にも「楽しいですよ!」と即答。なかなか休めないので大変だけど今は夢中になれて楽しいと言っていたのが印象的で、モノヅクリはストイックな部分があるけど、やっぱ楽しまないと良いものできないよな人間だもの。

そんなこだわりが過ぎる石橋製菓さんの甘納豆、本当にオススメなのでぜひ食べてみてください〜。ではまた今後!

今回のバイヤー一押し!

(石橋製菓)釜炊き甘納豆 きなこ花豆 ¥510

創業以来釜炊きにこだわり昔ながらの大釜を使用、仕込みから仕上げまで全て職人による手作業で作りあげます。じっくり時間をかけて出来上がる甘納豆は、豆本来の香りとふっくらとした食感に仕上がっています。

文文

日暮 学日本百貨店バイヤー

大型店「日本百貨店しょくひんかん」の立上げや、旗艦店となる「日本百貨店にほんばし總本店」をはじめ各店のMDを監修。売場に合わせた商品仕入やオリジナル商品の開発を行う。ニッポン各地の「スグレモノ」を発掘するため全国を飛び回る日々。

日本百貨店バイヤー日暮学が出会った日本の“いろいろ”や、ものづくりの裏側、作り手のこだわりなどをピックアップ!ニッポンのスグレモノを見つけるべく全国各地を奔走するバイヤーの日々の日記です。

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