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東京手仕事

2023.03.31

東京のスグレモノと作り手たち2022 vol.20|鍋谷グラス工芸社

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東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!

日本百貨店にほんばし總本店、店長の瀧川です。
今回お伺いしたのは、江戸切子の「鍋谷グラス工芸社」さん。
お話を伺ったのは、4代目の鍋谷海斗さんです。

鍋谷グラス工芸社は1949年創業。硝子製の灰皿製作から始まりました。
硝子専門工場のカガミクリスタルと工場が近かったこともあり、2代目のお祖父様の代から仕事を依頼されて江戸切子をスタート。
現在は4名の職人で江戸切子の製作をされています。

3代続く切子製作

切子の製作が始まってからは3代目となりますが、技術の進化と共に作れるものも変化し、作品はどんどん広がりを見せています。

お祖父様はカガミクリスタルから依頼を受けて製作をしていましたが、お父様の鍋谷淳一さんが江戸切子の伝統工芸士に認定されたことをきっかけに、ご自身のデザインで製作を始めます。
代表作の一つでもある「男のロック」で人気を博し、今では海外からも注文が殺到するほど大人気の職人さんです。

男のロック

通常、切子は透明なガラスに色ガラスを被せ、外側の色ガラスの部分をカットすることで模様を見せることが主流。
しかし、男のロックは、透明ガラスと色ガラスが四層に重なり合う四重構造になっています。
厚みがあるため堀も深くエッジが効いていて、とても重厚感がある作品です。
新しく斬新な作品に、業界内外から驚きの声が大きかったとか。

こちらは海外からも大人気の「プラネットロック」。左右で被せるガラスの色が違います。

そして、その技術を受け継いているのが4代目の海斗さん。
海斗さんもオリジナリティあふれる作品を作られています。
一番初めに作られたというのがこちらの「黒華」。

「美しいものにはトゲがある」

この作品のテーマだそうです。
「実体験じゃないですよ!」と冗談を交えながら、込められた想いを教えてくれました。

初めての作品は、「ガラスの本質」を表現したかったのだそう。
見た目には美しく煌びやかなガラスも、時には触れるものを傷つけてしまう一面もある。
そんなガラスの二面性を表現した作品だそうです。

持った時の重みや黒の放つ色の存在感から力強さを感じますが、その中に繊細さも感じられる作品です。

上から覗くと、より花らしく見えます。

続いて見せてくださった作品が、「氷晶」。

なんだか色が今まで見てきた切子と違うと思いませんか?
実はこれは内側に色ガラス、外側に透明ガラスという構造になっているため、カットをしても色が残ったままなのです。

これは青墨という色なのですが、この色が好きなので色を失わないようにと、内被せにしたそうです。

そして作品の名前の通り、ガラスで氷を表現。
このグラスに氷とお酒を入れた時が、器が一番輝きを見せると言います。

まるで氷の器のようです。

作品づくりへの想い

お父様の淳一さんの作品も、海斗さんの作品も、今まで私が触れてきた江戸切子とは少し違った、斬新な作品ばかり。
その作品づくりへの想いを伺いました。

「つまらないものは作りたくない。」
「新しいもの、驚きのあるものを作りたい。」

父の背中を見て学んできたけれど、自分にしかできないものがある。
そう語る海斗さん。

確かに、淳一さんの作品と海斗さんの作品はどちらも斬新ですが、全く違った雰囲気をまとっています。

作品づくりと商品製作と…

作品をみた人が、あっと驚き、感動してもらうために、日々試行錯誤しチャレンジを重ねている海斗さんですが、自身の作品作りだけではなく、鍋谷グラス工芸社としての重要な仕事もたくさんあります。
商品の製作をしていく中で、どう自身の作品をつくり出していくか。
有限の時間の中、そこのバランスをとるのがとても難しいのだそうです。

しかし、そこでチャレンジをし続けるのが海斗さん。
2023年3月ドバイで開催の国際アートフェアへの参加を決断。 時間がない中で新作を作り、海外の反応を確かめるべくドバイへ行かれたそうです。

工房へ

続いて、工房の様子をご案内くださりました。
集中力のいる作業のため、カットの機械音だけが工房内に響いています。

淳一さんが「プラネット」をカットされていました。

ガイドラインのようなアタリから、「菊つなぎ」という伝統柄をカットしていきます。

海斗さんも「白華」のカットを見せてくださりました。
こちらが息を止めてしまいそうになるほど、とても集中してカットされています。

江戸切子のスクイーザー

こちらは東京手仕事で作られたスクイーザーです。

これも手仕事で一つひとつカットしています。
真ん中の山の部分は果物がしっかりと絞れるよう彫の深さも重要になっていきます。

江戸切子でフルーツを絞るなんて、なんと贅沢なのでしょうか。
当店でも、お客様が驚かれている姿をよく目にします。
「使うのがもったいない〜」というお声が笑顔と共に聞こえることも。
まさに、あっと驚かせる作品。海斗さんの作品づくりへの想いが体現されています。
実はアクセサリー置きやランプシェードなどにしても素敵なのだと教えてくださりました。

今回お話を伺い、新しいものを作り人に驚きや感動を与えたいという、海斗さんの作品づくりへの熱い想いがとても印象的でした。
お父様の存在もきっと大きく、尊敬をしながらも、だけどちょっと負けたくないというような気持ちも垣間見え、「やってやるぞ!」という意気込みを強く感じました。
きっとこれからも、あっ!と驚く作品がたくさん生まれるのだろうとワクワクしています。
鍋谷海斗さん、本日はありがとうございました。

日本百貨店にほんばし總本店では、スクイーザーを初め、鍋谷グラス工芸社の作品が多数ご覧いただけます。
手に取るとより良さが実感できる作品たちとなっております。
是非、店頭でお手に取ってご覧くださいませ。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。

東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。