東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!
日本百貨店にほんばし總本店、店長の瀧川です。
今回お伺いしたのは、「柿沼人形」さん。
柿沼人形は1950年創業、江戸木目込人形の節句人形を手がける工房です。
お話をお伺いしたのは、柿沼利光さん。
柿沼さんの作品は、節句人形はもちろん、パンダや招き猫などのインテリア商品からリングケースやトレイなどの実用的な商品まで、現代の生活にあうアイテムを幅広く制作されています。
前職は公務員だったという柿沼さん。
学生時代から手を動かすことが好きで、美術部に所属していたそうです。
高校生の頃に木目込みの手伝いをすることもあったそうで、自然とお父様の後を追い、木目込職人の世界へ入ったのだとか。
雛人形ができるまで
木目込人形の代表といえば雛人形。
工房へおじゃまして、その人形づくりを拝見させていただきました。
工房には、木目込をする職人さん、お雛様の髪を結く職人さん、生地を裁断する職人さんなど、5~6名の職人さんがそれぞれの仕事をされていました。
その他にも、筋彫り専門の職人さんや、頭(かしら)を作る職人さん、髪飾りなどの装飾品を手がける職人さんなど、多くの職人さんが携わり、一つの人形が出来上がるそうです。
少なくとも10名くらいの職人さんがそれぞれの作業を丁寧に、大切に作られているのだとか。
まるで小さな子供を育てるようで、お雛まつりにぴったりですね。
こちらは、人形の土台となる造形をされている工程です。
人形作りの一番初めの工程となります。
柿沼さんは、少し動きをつけることを意識しているそう。袖のゆったりとしたカーブが、なんだか動き出しそうに感じます。命を吹き込むようですね。
粘土で形が決まったら、それを型に起こし、木目込人形の土台となる部分を作ります。
土台の部分の伝統的な素材は、桐の粉と正麩糊を混ぜた桐塑(とうそ)と呼ばれるもの。
今は樹脂を使うこともありますが、その特徴は一長一短。
柿沼さんは、商品に合わせて素材を変えて製作しています。
こちらは木目込みの工程です。
目打ちを使って、溝に生地を木目込んでいきます。
続いて、お雛様の髪を結く工程。本当に繊細な作業です。
細い正絹の糸でできた髪を、とても手際良く結いていました。
変化する雛人形のかたち
皆さんはおうちに雛人形を飾られていますか?
大きなひな壇を飾られる方は少ないのではないでしょうか。
昔は豪華絢爛な雛人形の人気が高かったそうですが、現在はナチュラルテイストで、柔らかい色使いのものの人気が高まっているそうです。
お店を見渡すと、今までのイメージとは違う、パステルカラーや白木の雛人形がたくさん並んでいます。
3月初旬はまだ寒いこともあり、昔は白はあまり使用されなかったそうですが、今は明るい色味も人気があるのだとか。
サイズもよりコンパクトなものが増えているようで、保管するときのコンパクトさも重要視されるそうです。
新たな試み、その想いは
柿沼さんの新作、東京手仕事認定商品の“コマイヌチャームズ”についてお話を伺いました。
「縁起物を作りたい」という想いからはじまり、邪気をはらい境内をお守りする意味がある狛犬をモチーフにしたそうですが、本物の狛犬は表情が険しいものが多い…。
でもペットのように可愛がって欲しいという想いから優しい表情に仕上げ、名前も「シロ」「チャロ」「クロ」と可愛らしい名前に。
柿沼さんは、「木目込を知るきっかけになって欲しい」と語ります。
伝統的な雛人形の需要が減ってきているのは事実。
しかし、日用品や現代の生活に合う人形を作ることで、「木目込」に触れてもらえる。
それをきっかけに、雛人形にも興味を持って、知ってくれる人が増えてくれたら、素敵なことですよね。
伝統的なものづくりを続けるために、新しい商品を作り出す。
柿沼さんの新しい挑戦はこれからも続いていきそうです。
日本百貨店にほんばし總本店では、柿沼人形の商品をお手にとってご覧いただくことができます。
大人気のパンダシリーズや、招き猫も多数ご用意しております。
ぜひ、日常に木目込をすこし取り入れてみてはいかがでしょうか。
皆様のご来店をお待ちしております。
東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。