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東京手仕事

2023.03.24

東京のスグレモノと作り手たち2022 vol.14|株式会社富士製額

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東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!

日本百貨店にほんばし總本店、店長の瀧川です。
今回お伺いしたのは、「株式会社富士製額」さん。
お話をお伺いしたのは栗原大地さんです。

東京額縁

突然ですが、みなさんは絵画を飾るあの額縁が「東京額縁」という東京都指定の伝統工芸品であることをご存知でしょうか。恥ずかしながら、実はわたしは知りませんでした…。
額縁とひとことで言っても、その種類や素材、技法は様々。
本日は「東京額縁」について、栗原さんに詳しくお話を伺います!

東京額縁は型を使って細かな装飾を施すのが、その代表といえる技術の一つ。
まるで木彫のようですが、型でできているため効率も良く、複雑な形を均一に仕上げることができるのです。とても綺麗ですね。

富士製額の歴史

1947年創業の富士製額。
油絵や水彩画、日本画など様々な絵画の額縁づくりや額縁の修復などを手掛けています。
代表の吉田さんのお父様がご兄弟で漆工所を営まれたのが始まり。
当時はアメリカ向けの写真立てを作っていたそうですが、国内の絵画ブームを受け、徐々に額縁づくりに移行してきたそうです。 2度の絵画ブームで拡大していった事業ですが、オイルショックの影響で苦しむ時代もありました。しかし、納期や希望に応える対応力を武器に、困難も乗り越え、お客様からの厚い信頼を得て現在まで脈々と続いています。

額縁づくりとの出会い

栗原さんは、富士製額で額縁づくりを初め、職人歴は14年目。
大学時代は洋服のデザイナーになりたい!と日々奮闘していたそうです。
憧れのデザイナーさんから指導を受けていたのですが、そこから就職には繋がらず、その道から離れることに。
就職先に悩んでいた時に、お祖父様から額縁づくりの話を聞き、興味を持った栗原さんは、すぐに富士製額に電話をかけて見学を申し込んだそう。
工房で額縁づくりの工程や技術を聞いていく中で、その世界に魅了され、すぐに弟子入りすることを決意。
師匠や先輩方に教わりながら、その技術を磨いていき、今に至ります。

「全く何も知らない自分を雇ってくれた社長に感謝です。周りの多くの職人さんに育ててもらって今があります。感謝しかないですね。」

周りの職人さんが皆さんいい人なのだと、笑顔でおっしゃっていました。

額縁ができるまで

額縁づくりは、土台となる木枠を作る職人さん、装飾をする職人さん、仕上げをする職人さんと、それぞれ役割分担があります。

自分だけで作っているのではなくみんなで作っている。だからコミュニケーションも大切だと、栗原さんは話します。
作業をされている職人さんたちへ声をかけながら、親しくお話しされている様子が印象的でした。気さくなお人柄が伺えます。

栗原さんが担当されているのは、装飾や仕上げの工程。
作業を少し見せていただきました。

こちらは「下地」の工程。
土台となる木枠に下地を塗り重ねていきます。使われるのは、胡粉を膠で溶いたもの。昔ながらの製法で現在も作り続けています。

こちらは「箔押し」の工程。

あっという間にピカピカに

箔はとても軽いため、風が天敵。暑い夏でもエアコンや扇風機が付けられないので、夏場は大変です…。

そして、東京額縁の花形とも言える、「型抜き」。
木型に粘土質の素材を詰めて形を成形します。

こちらも昔ながらの素材で、胡粉と膠と麩糊を混ぜたもの。
乾燥すると硬くなりますが、成形時は粘土状のため、伸ばしたりつなげたりと加工がしやすいのです。

乾燥するとカチカチに。

やはり先人が考え出したものは理にかなっていますね。
日本らしい素晴らしい技術だと感じました。これからも長く続いて欲しいです。

額縁にエイジング?

工房の隅に、なにやら古めかしい額縁を発見!

「やっぱり歴史のある工房は昔の額縁なんかもあるのですねー。」と伺うと、この額縁は出来立てホヤホヤの新しい作品だとか。
でも、なんでこんなにホコリをかぶって…

「エイジングです」

なんと、これは古いわけでもホコリをかぶっているわけでもなく、古くてホコリをかぶっているかのように彩色されたものだったのです。
すっかり騙されました。

美術館などで古い絵画を飾ることもしばしば。
絵画が美しく見えるように額縁は存在していないといけません。
古い絵画にピカピカの額縁が付けられていたら、なんとなく違和感がありそうですよね。

栗原さんは、職人になりたての頃、師匠に「額縁をたくさん見ろ」と言われたそうです。
どうしてそこにホコリが溜まるのか、どうしてそこが擦れているのか、人の手が触れるのはどこか、そんなことを考えながら美術館で額縁を眺めていたそうです。

そして、このエイジングの工程は、栗原さんが一番好きな工程だとか。

暮らしに額縁を

東京手仕事認定商品の「FRAME FRAME」についてもお話を伺いました。

こちらは、立体物専用の額縁。
お気に入りの置物を飾ってもいいし、植物でもいいですね。

「額縁の切り取るチカラはすごい。子供の落書きでも作品になる。」と栗原さん。
確かに。FRAME FRAMEなら、お子様の工作した作品を飾るのもいいですね。

金ピカの美術館にある額縁はなかなか普通の家には飾らないので、もっと誰でも暮らしに取り入れられるものが作りたかったと、栗原さんは語ります。

そして、この作品をきっかけに、富士製額を、東京額縁を知って欲しいと。
長い歴史があるからこそ、培われた確かな技術やノウハウがある。
まだまだ知られていないからこそ、発信していかないといけないし、残していかないといけないと感じているそうです。

絵画の保存は注目されますが、額縁の保存はなかなか注目されにくいのが現状です。
でも残すべき技術がたくさんある。
それを続けて、発信して、残していくことが、栗原さんのこれからの目標だそうです。
富士製額のSNSも栗原さんが積極的に発信しています。額縁作りの細かな作業も見られるので、是非ご覧になってみてください。

そして、暮らしに額縁を取り入れる第一歩として、FRAME FRAMEをご覧になりたい方は、日本百貨店へ是非ご来店くださいませ。

栗原さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。