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東京手仕事

2023.03.23

東京のスグレモノと作り手たち2022 vol.13|有限会社マチダ

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東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!

日本百貨店にほんばし總本店、店長の瀧川です。
今回お伺いしたのは、東京手描友禅の「有限会社マチダ」さん。
お話を伺ったのは、代表取締役の町田久美子さんです。

初代の職人が生まれるまで

有限会社マチダは、印刷と日本茶販売の事業が始まり。
町田さんが手描友禅を始め、新事業として再スタートを切りました。

初代の手描友禅職人となったきっかけは、中学2年生の時。
訪れた金沢で加賀友禅の実演をみて一目惚れ。翌日にはお母様に「友禅職人になる!」と宣言していたそう。
それから友禅のことや、職人になる方法などを図書館でいろいろと調べていくうちに、着物がメインとなる仕事のため、文化の変化から就職するのが難しいことを知りました。
厳しい世界だと知りながらも、諦めきれない思いがあり、高校を卒業するときに友禅職人になることを決断。

世の中も就職氷河期と呼ばれる中、やはり友禅職人の就職先はなく、弟子入りするのも困難…。
しかし、そこで諦めないのが町田さん。

「やると決めたらやるしかない」

そんな強い意志で、技術を教えてくれる方をどうにか探し出しました。
弟子をとっていなかった当時の師匠も、町田さんの熱い思いを聞き、頑張る姿をみていくうちに、弟子として迎え入れてくれるようになったそうです。

お弟子さん時代に作られた、お着物の作品「空上から」。
空から見た田んぼの風景がモチーフになっています。

着物が完成した状態で絵柄が綺麗に合わないといけませんが、染めるときは一本の生地を縫わずに広げた状態で染めます。
しっかりと計算して描かなければ、絵柄がチグハグになってしまうので緻密な計算が必要なのです。

手前の白い生地が「仮絵羽」と言われる着物を仮縫いした状態のもの。
(なかなかパーツの理解ができず…。ご丁寧に教えていただきました。)

この仮絵羽に絵柄をトレースして、仮縫いを解いて染め上げます。
綺麗に仕上げるには、設計がとても大切になるのですね。

 

そめもよう立ち上げ

手描友禅は、その名の通り「手描き」で一点一点作品をつくっていきます。
出来上がった作品は、展示会で販売する世界。

一枚の着物が出来上がるまでには大変な手間と時間を要するため、若手の職人はなかなか枚数が揃わず、展示会ができないそうです。
ならばグループ展のようにみんなで持ち寄ろう!と立ち上げたのが「そめもよう」。
作品を持ち寄って展示会を開けば、お客様もいろいろな商品を見ることができて楽しむことができ、職人たちも協力しあえるためできることの幅が増える。
2013年の立ち上げ当初は10名で始めた活動も、今は20名近くまで増えているそうです。

 

デジタル友禅

そして、そめもようの活動のひとつとして新たに始めたのが「デジタル友禅」。
デジタル友禅とは、手描きやデジタルでデザインをし、それをデータ化して生地にプリントする技法。
手描きの良さを残しながら、価格を抑えることができるため、手軽に友禅を楽しめます。

手描きの原画をプリントし、バックやストールに。

手描友禅の作品は、一つひとつ手描きのため、どうしても価格が高額になってしまいます。
そのため、敷居が高くなかなか普及しづらい。

「手描友禅の良さをもっと多くの方に知って欲しい」
「手描友禅をもっと身近に感じて欲しい」

デジタル友禅は、そんな想いから生まれた技術です。

もちろん、手描友禅も大切にしたいため、しっかりとルールを設け、棲み分けをしています。
どちらにも良いところがあるので、お互いにとって良いように、当初のルール作りも試行錯誤されたそうです。

東京手仕事認定商品である「帯揚げストール」も、このデジタル友禅の技法を使用した商品です。
ポリエステルのタイプは発色が良く、とても明るい印象になります。
デジタルだからできることもあり、デザインの幅が広がったそうです。

 

ボーダーレス化

新しいことをどんどんとやられている町田さんですが、これからはもっと業界の垣根をなくしていきたいのだそう。
横のつながりで日本各地の友禅職人同士のコミュニティも、もっと広くは海外の友禅ができても面白い!と楽しそうに語られます。

「友禅をやる人はどこの国の人でもいい。色の感覚も違って面白いものができそう。」

そんなオープンな姿勢が、新しいものを生み出すチカラになっているのだと感じました。

どの世界でも、歴史があるとどうしても固い風習は残るもの。
そこにフラットな視点と新しい価値観で向き合い、その技術を残して伝える方法を模索している姿がとても印象的でした。
近い未来、世界各国で友禅が広がっているかもしれないですね。

町田さん、本日はありがとうございました!

日本百貨店にほんばし總本店では、デジタル友禅の商品をお手にとってご覧いただくことができます。
鮮やかな色彩のストールを、ぜひ店頭でご覧くださいませ。
皆様のご来店をお待ちしております。

東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。