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東京手仕事

2023.03.22

東京のスグレモノと作り手たち2022 vol.12|澤井織物工場

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東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!

こんにちは!日本百貨店にほんばし總本店、スタッフの中川です。
今回お伺いしたのは八王子にある「澤井織物工場」さんです。

澤井織物工場の歴史は古く、1900年ごろ養蚕業からスタートし、大正から昭和初期に織物業を始め、創業120年の歴史を誇る作り手さんです。

今回お話しをお聞かせいただいたのは4代目澤井伸さんです。

澤井織物の特徴はなんと言っても「シャトル織機」を用いたあたたかみのある織物です。
「織機」とは生地を織る機械のことで様々な種類がありますが、主に、横糸を通すためのシャトルがある「シャトル織機」とシャトルを使わない「シャトルレス織機」に分けられます。
2つの織機にはそれぞれ特徴がありますが、シャトル織機は低速度でしか織ることができず職人の手作業が必要不可欠です。縦糸にも横糸にも負担を少なく丁寧に織り上げることで、シャトル織機でしか表現できない温かみのある生地になります。また、高密度で織ることで耐久性も高く、織り上げた布は長く使うことができるのです。

糸と糸の間をシャトルが左右に動き織りあげていきます。

一方シャトルレス織機は生産性が非常に高く、高速で横糸を運ぶことができます。表面が均一でツルツルとした仕上がりになり、近年生産されている生地のほとんどは、シャトルレス織機で織られています。
澤井織物では、「量を多く作るのではなく、良いものを届けたい」という想いからシャトル織機をメインに用いて、「風合い」にこだわり、あたたかみのある製品をつくり続けています。

八王子は古くから「桑の都」と呼ばれ、養蚕と製糸、織物業の一大産地として栄えました。現在は「多摩織」が伝統工芸品に指定されています。多摩織は、お召織、紬織、風通織、変り綴れ織、綟り織の5つの織物を総称し、多様な技法が盛り込まれている伝統的な織物です。

多摩織は軽くてシワになりにくいという特徴から日常使いに向いており古くから多くの人に親しまれてきました。
澤井織物では創業から着物向けの生地をメインに生産していました。「いろいろなものに挑戦していきたい」という思いから、現在は幅広い製品作りに注力されています。
その作品は、自社開発はもちろん、様々なハイブランドのアパレルメーカーからの依頼によるマフラー、ストール、服地が多くを占めます。
異業種からの仕事も多く、糸の太さ、色、素材、組み合わせは無限大でひとつひとつ風合いが変わります。
近年では東京オリンピックにかかわる布づくりにも携わり、生地・品質の良さが多くの方に周知されるきっかけにもなりました。

また、Googleに技術提供し、「洋服に電気が通る糸を織り込み、その部分を触るとスマートフォンの操作ができる」という近未来的な製品開発にも取り組んでおられます。
「織れるものはなんでも織る」と、長く様々なことに挑戦し続けている澤井さんだからこそなせる技だと感じます。
「うちでは量は出来ないので、素材にこだわり風合いを大切にしています」と澤井さんが何度もおっしゃるように、澤井織物の製品はとにかく肌触り良くあたたかみがあります。
にほんばし總本店でもお取り扱いしている、風通織のシルクストールや地元・八王子の桑茶で染めたマルベリーストールなどどれも肌触りが抜群で肌に吸い付くような感触に感動を覚えます。

細部の仕上がりにもこだわり、ストールのフリンジ部分はすべて手作業で編み上げます。機械で編み上げると思い描く形に仕上がらないそうで、手作業で納得のいく形に仕上げます。
そんな細部までこだわり抜く澤井織物だからこそ、様々な分野からの支持も強く根強い人気を誇るのだと感じます。
澤井織物工場では現在約11台の織機があり、至る所から「カシャンカシャン」と織機の音が聞こえてきます。織物業を畳まれたメーカーなどから織機を譲り受け、大切に修理しながら使い続けています。

敷地内には染をするための温室も建てられ、染から出荷まで自社で完結できるようになっています。
自社で完結させることで、澤井織物ならではの作品を数多く生み出すことができ、オリジナリティー溢れる物づくりが大切にされています。

お話を伺う中で何度も耳にし、印象に残ったのが「オリジナルを大切にする」こと、「織れるものはなんでも織る。様々なことに挑戦する」という澤井さんの織物に対する熱い想いです。

そんな澤井さんに今後の目標、チャレンジしていきたいことをお伺しました。
「もっと『織物』が日常に溶け込んでほしいですね。ホテルのベッドカバーなんかも良いと思うけど、毎回洗濯すると思うとなかなか難しいところではあるんだけどね…」
と古くから伝わる日本の伝統文化を、現代の暮らしにも取り入れていき身近に感じてもらいたいと澤井さんは語ります。
古くからの技術を大切に受け継ぎつつ、新しいことにも挑戦し取り入れていく。
決して簡単ではない技術の伝承を澤井さんは様々な形で体現しているのだと感じました。

日本百貨店にほんばし總本店では、多摩織のひとつである「風通織」の技術がつまった肌触り抜群のシルクストールなどストールを中心に取り揃えております。
細部までこだわり抜いた澤井織物工場が生み出すぬくもり溢れるストールを是非お近くでご覧ください。

東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。