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東京手仕事

2023.03.01

東京のスグレモノと作り手たち2022 vol.8|八重樫打刃物製作所

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東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!

日本百貨店にほんばし總本店、店長の瀧川です。
今回お伺いしたのは、下町情緒が残る街、葛飾区立石にあります「八重樫打刃物製作所」。

お話を伺ったのは、江戸打刃物 四代目刀匠「宗秋」こと八重樫潤一さん。
現在は、八重樫さん、叔父の忠夫さん、お弟子さん2名で製作しています。

江戸打刃物 四代目刀匠「宗秋」こと八重樫潤一さん

江戸打刃物のルーツ

八重樫打刃物製作所は、元を辿ると刀鍛冶。刀鍛冶とは、刀を作る専門の職人のことで、戦国時代が終わり刀の需要が減っていく中、ハサミなどの「生活道具」を手がける職人と、大工道具などの「職人道具」を手がける職人とに分かれていきました。

江戸時代に創業した八重樫打刃物製作所は、「総火造り」という伝統製法で鑿(のみ)や鉋(かんな)などの本職の職人が使う「職人道具」を主に手掛けてきました。

ちなみに「東京のスグレモノと作り手たち2022」第一弾でご紹介した正次郎鋏刃物工芸は「東京打刃物」と呼ばれ、鋏の製作など「生活道具」を主に手掛けています。

こんな道具まで…!

工房へお伺いすると早速ありましたありました!
初めて出会う専門道具の数々。

植木職人が使う接木(つぎき)用の刃物、箒職人が使う縫針、油絵用パレットを作るときに使用する刃物や、葉鉋(はがんな)と呼ばれる組子職人が使う刃物など。
どれも「そんな専門道具があるの?!」と驚く用途ばかり。
ブルドーザーの先端の器具を取り替えるための治具を作って欲しいというオーダーもあったとか。いろいろな依頼がくるものですね。

こちらは、漆木から樹液である漆を採取するときに使用する「漆鉋」。
左側に刃を取り付けて木を引っ掻くことで傷をつけ、右側のヘラの部分で垂れてくる漆をすくいとります。日本一の漆の生産地である岩手県二戸市浄法寺でも使われているそうです。

木工の町である神奈川県小田原市の木工職人から、鉋や鑿などの道具を依頼されることもあれば、国宝の仏像を修理される京都の仏師から依頼が来ることもあるとか。

でも、どうして日本全国から八重樫さんに依頼が来るのでしょうか。

チャレンジと実績

その理由をお伺いすると、自然と向こうからお話が来るのだとか。
「今の時代はなんでも調べられるからすごいですね〜。」と朗らかにおっしゃる八重樫さん。

かつてはその土地土地に鍛冶屋があり、道具を作る職人がいましたが、後継者がおらず廃業するところが多い。さらに元々鍛冶屋は専業のため、新しい依頼に対応する職人も少ない。

そこで依頼主は希望の道具を作れる職人を探し回って、八重樫さんのところにたどり着く。
そうやって日本全国から依頼が来るのですね。納得です。

しかし、作ったことのない道具や部品を作るのはやっぱり大変な作業。
何度も試行錯誤を繰り返しながら作っていくそうです。

6年目になるお弟子さん

「若い子たちも、同じことの繰り返しではなく、いろんなことができるから飽きなくていいんじゃないかな」
と、製作に励むお弟子さんの姿を見ながら優しい笑顔でおっしゃいます。

暖かいお人柄

お弟子さんのひとりである大月さんにもお話を伺うことができました。
鍛冶屋に憧れ、この世界に飛び込んだ大月さん。

5年目の大月さんと八重樫さん

想像していた職人の世界は、親方が厳しく無口で、叱られて物が飛んできたりするのでは…と、始めは不安もあったのだそう。
ところが、飛び込んでみるとなんと優しい親方!とても丁寧に指導してくださり、楽しく働けているそうです。

父の背中をみて職人へ

ここ立石で生まれ育ち、お父様の刃物作りを身近にずっと見てこられた八重樫さん。
仕事のお手伝いはなんと小学生から。力仕事はできませんが、作業の準備などできることから手伝い始め、中学の頃には刃物を叩き始めたそうです。

“叩き始める”というのも、八重樫さんが手がける刃物づくりは「総火造り」と言われ、素材を金槌で叩き伸ばしながら形成する手法なのです。

ここで火を焚いて叩きながら形を作りだしていく「火造り」という工程を行う

大変な力仕事で製作に時間がかかりますが、一つ一つ丹念に叩いて形成することで、丈夫で長く使える切れ味の良い刃物が生まれます。
ベルトハンマーなどの鉄を叩く機械を使う職人さんが多い中、2名体制で大きなハンマーを振り、人の力のみで叩いて作り上げる珍しい作り手さんでもあります。

学生生活を終えた20歳から本格的に家業を手伝い、職人歴はなんと50年目。
幼い頃からお父様の背中を見て育ち、自然と後を継いで来られたそうです。

包丁へのこだわり

職人道具でもあり、生活道具でもある包丁。
刀鍛冶から始まる八重樫刃物製作所は、「切れ味」にこだわり、その技術を活かしてきました。
切れ味の良さと、希望の形を作れる技術の高さから、プロの料理人からのオーダーも多いそうです。

「火造り-形成-焼入れ-研ぎ」工程が進むごとにだんだんと形ができあがります。

八重樫さんが作る包丁の切れ味の良さの秘密のひとつが、素材。
「安来鋼」と呼ばれる鋼を使用しています。
安来鋼は砂鉄の産出地である島根県で作られる鋼で、その質の良さから日本刀の原料として使われてきました。

東京手仕事認定商品である包丁「安来鋼包丁」も、その名の通り安来鋼を使用した切れ味抜群の包丁。
極軟鉄で安来鋼を挟み込む3枚打ちのため峰の部分まで鋼があり、研ぎ進んでも切れ味が落ちることがないというすぐれもの。
まさに切れ味を追求した究極の包丁です。

東京手仕事認定商品「安来鋼包丁」。刃の仕上げと柄の素材が選べるオーダー式。

お話の最後に、今後チャレンジしたいことをおうかがいすると、

「今も毎日がチャレンジだね!」

愚問でした…。
依頼が来たら「やれることはやる」と、日々チャレンジするのが八重樫さんですね。

(右)八重樫さん、(真ん中)叔父の忠夫さん

八重樫さん、本日はありがとうございました!
また新しい職人道具のお話しを聞かせてください。

日本百貨店にほんばし總本店では、「安来鋼包丁」のオーダーを承っております。
9種類の柄の素材と3種類の柄の形、3種類の刃の仕上げからお好きな組み合わせをお選びいただけます。
プロも惚れ込む切れ味抜群の包丁を、是非店頭でご覧くださいませ。

東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。