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東京手仕事

2023.03.01

東京のスグレモノと作り手たち2022 vol.7|高橋工房

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東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!

にほんばし總本店スタッフの齊藤です。
今回お伺いしたのは、文京区水道にある「高橋工房」さんです。
江戸末期にあたる安政年間創立以来浮世絵の復刻版画を始め、浮世絵モチーフの小物などオリジナル商品など幅広く展開しています。

江戸木版画は版下絵を描く「絵師」、原画に沿って木版を彫る「彫師」、色を擦り重ねて作品を仕上げる「摺師」による分業によって作り上げられます。
高橋工房は代々「摺師」の家系で、四代目より「版元」という企画・統括も行っています。

本日は六代目にあたる高橋由貴子さんにお話を伺いました。

六代目の高橋由貴子さん

高橋由貴子さんは、東京伝統木版画工芸協同組合の理事長も務めていらっしゃいます。
高橋工房に入るにあたり、お父様の運転手から始め、仕事を近くで見て覚えていったそうです。
その後、お兄様より家業を継ぎ、現在は六代目として江戸木版画の文化・技術の継承や作品の復刻や修復、新しい作品の制作に取り組んでおられます。

お父様の影響

もともと摺師であった高橋工房が版元の仕事も兼ねるようになったのは、「自分のやりたい絵を摺りたい」という四代目のお父様の代からです。
そんなお父様が「教育はお金で買えるが、教養はお金で買えない。」と小さい頃から絵画や文化に触れる環境を作ってくださったそうです。
日本美術院展に一緒に行って、作品の落款を見ないで誰の作品か当てるように言われることもしばしばあったのだとか。
「普段から見ていると自然とわかるようになってきますよ。」と高橋さん。
その経験が今の自分に生きているので、感謝しているのだと語ってくれました。

三つの絵巻物

褒章をいただいたお父様やおじい様から刺激を受けて、3巻からなる絵巻物を江戸木版画で制作された高橋さん。
洋画家の小杉小二郎さんに「マッチ売りの少女」、日本画家の堀川えい子さんに「竹取物語」、彫刻家の舟越桂さんに「ピノッキオ」の原画をそれぞれに依頼。
約3年かけ、総勢20名近い職人さんが木版画制作に携わったのだとか。 それぞれ、タッチや色合いが全く異なり、その美しさに圧倒されてしまいました。

江戸木版画の新しい切り口

そんな高橋さんが今年、東京手仕事で新しく生み出した商品がこちらの行灯です。

行灯/NIRAMI

インパクトがありながらも、今の時代にあった落ち着いたデザイン。
従来1枚である浮世絵を4面に分けて表現するという江戸木版画の新しい楽しみ方です。
「目だけで写楽とわかりますよね。」と高橋さん。
目が下で口が上にあるデザインも高橋さんのお気に入りなのだとか。
電池式で持ち運びが出来るので、様々な場所で使える優れものです。

YAREシリーズ

江戸木版画の復刻版画では高い品質を保つために、原画と色味が異なっていたり、ずれていたりして、正規品として販売できないものを「ヤレ」と呼んでいます。
高橋さんはそんなヤレを“YAREシリーズ”とし、ブローチ、マスクケースや短冊など身近で使えるような商品を展開されています。

そんなYAREシリーズの新しい商品を見させていただきました。

浮世絵トリミングはがきは、にほんばし總本店にて販売しております。

江戸木版画の特性の一つとして、表の絵が紙の裏側までうつっており、裏から摺りの跡も楽しめるというのがあります。
こちらは上の部分のみ貼り付けられているので、裏側からも江戸木版画を堪能できます。 切り取り方もそれぞれ異なり、高橋さんのセンスが光っています。

江戸当時から受け継ぐ技術と技法

この日は、2階でお弟子さんが作業されていて、その様子も見学させていただきました。

彫師が彫った山桜の木で作られている版材に絵具を乗せ、ばれんという道具で和紙を擦りあげていきます。
絵具や和紙の水分量、摺り具合なども計算しながら作り上げていきます。
そのため、100枚だったら100枚を全て均質に摺り上げるのがとても大変なのだそうです。

最後に、今後の展望についてお伺いすると、
「摺れば摺るほど、原点の浮世絵に戻るようになってきました。技術の集大成をどう見せるかですね。」
「決められたサイズの中にどうやって落としこむかを考えるのが楽しいです。」
なるほど。長年様々な形で江戸木版画に携わってきた高橋さんだからこそのお答えをいただきました。

高橋さん、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました!

160年以上続く高橋工房さんの技術を間近でご覧になりたい方は、ぜひ日本百貨店にほんばし總本店までお越しください。
みなさまのご来店お待ちしております。

東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。