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東京手仕事

2022.10.19

東京のスグレモノと作り手たち2022 vol.2|株式会社モンブラン

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東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!

日本百貨店にほんばし總本店、店長の瀧川です。
今回お伺いしたのは、1960年の創業以来、墨田区で東京洋傘を作り続ける「株式会社モンブラン」さんです。

モンブランの前身は、14歳から傘を作り始めたという先代の山口政広さんが創業した「山口商店」。その卓越した技術は、現在「株式会社モンブラン」の職人たちに受け継がれています。

伝統工芸士への道。

今回お話をお聞きしたのは、伝統工芸士の山口君枝さん。

山口さんはモンブランの現代表、山口祐司さんとご結婚されたのをきっかけに傘職人の道へ。
修理から始め、親子ほど年の離れた先輩職人たちの中で、傘作りの技術をコツコツと身に付けていったそうです。

当時の職人さんたちは「見て覚えろ」というまさに職人気質の方だらけ。
親方に付いたら、そのやり方を一切変えずに貫く、という方がほとんどの中、
山口さんは多くの職人さんの様々なやり方に触れ、自身に合う手法を取り入れていきました。

「これはこうしなきゃいけない、とかではないんです。みんなそれぞれ自分のやり方がある。だからいいとこ取りでいいんですよ。」
と朗らかに話す山口さん。
様々な技術を柔軟に取り入れる姿勢は、当時とても珍しかったようです。

そんな柔軟に取り組む姿勢は伝統工芸士となった今でも変わらず、
道具一つにしても、ずっと同じものを使い続けるだけでなく、自分に合う道具を探し続けています。

こちらは富山県で作られている針。
展示会でたまたま見つけた針の使い心地がとても良く、今では愛用品となっているそう。
あまりの良さに他の職人さんにもおすすめしたそうですが、使っている道具は変えたくない、と試さない方も多いのだとか。

道具を拝見

ふだん工房で使用している他の道具も見せていただきました。

帽子用につくられたミシンを改良して、傘仕様に。
手作りの木型(右)。切り出された生地を「コマ」と呼ぶ。(左)

こちらは傘の一面の生地を裁断する際に使用する木型。傘用の定規のようなものです。
一見直線のように見えますが、傘の湾曲に合わせて木型もゆるやかに絶妙なカーブを描いています。
これも職人さんによってちょうどいい具合があるため、それぞれに手作りされるそうです。

傘の骨は8本と16本のものがあります。
骨の数に応じてこの「コマ」を切り出し、つなぎ合わせて傘は作られます。
コマの裁断が1ミリでもずれれば、16面で16ミリのズレ。
傘作りはミリ単位のズレも許されない。まさに職人技ですね。

奥深い職人の世界

山口さんが尊敬する職人さんは、80歳を超える大ベテラン。
特別な技法を使う訳でもなく、ただひたすら一つ一つの工程がとても丁寧なのだとか。
その細かな気遣いと丁寧さで、仕上がりが大きく変わる。
なんとか真似をしようと試みたそうですが、やはりそれぞれのやり方で技を磨いているため、なかなか同じようにできることではないそうです。

なんとも奥が深い職人の世界。
そして、今なお新しい技を取り入れ、磨き続けようとする山口さんが、とても輝いて見えた瞬間でした。

受け継いだ 「想い」 をデザインに

そして、モンブランの傘の特徴といえば、まるでアート作品のような多彩なデザイン。

「雨の日って憂鬱になるじゃないですか。使う人の気持ちがちょっとでも晴れやかになるといいなと思って。」
雨の日でも、使う人の心が明るく楽しくなるように。
製造技術だけでなく、先代から続くその「想い」も山口さんは受け継ぎ、遊び心溢れる新しいデザインを生み出しています。

山口さんがはじめてデザインした「シャンデリア」。

代表作「ほぐし織り」がうまれるまで

先代が14歳で傘作りを始めた頃に出会い、魅了されたのが「ほぐし織り」という織りの技法。

まず仮織りした白地の反物を、デザインに使われている色の数だけ型紙を使って手捺染で染色します。
それを色止め処理した後に、手作業で横糸をすべて取り除き(ほぐす)、更に本織りする、というたいへん手の込んだ技法です。
手間はかかりますが、プリントでは到底出せないような、独特な柄のゆらぎ、やわらかな風合いが生まれます。

元々は銘仙などの着物に使われていた技法。傘に使える生地幅になるように、織機から作り替えたそう。
ほぐし織りの仮織り。よーく見ると隙間を開けて織ってある横糸がわかります。

人の手をかけてこそ、美しくやさしい表情に仕上がるのですが、
始めた当初は「なんでそんな手間のかかることをわざわざするの?」と周囲から言われることも多かったそう。

「量産がむずかしいものでも、他の誰にもできないもの作り続けていれば、いつか価値を持つようになる。」
効率の良し悪しよりも質の良い本物を、と信じ続け、今では「モンブランといえばほぐし織り」と言われるほど、長く愛される代表作となりました。

柔軟さから生まれるアイデア

そのほぐし織りも、徐々に染色職人や機織職人が減っていき、今ではなかなか作れないそう。
残念ですね…と落胆する私に山口さんは、

「プリントでもできることがたくさんあるんですよ!ほぐし織りはもちろん素晴らしいし、絶やしたくない。でもプリントにしかできない表情もあるし、良いものはひとつではないから。」
「それに今の時代、どんどん技術が発達して、ほぐし織が機械でもできるようになるはず。すぐじゃなくてもね。」
と、とっても明るく答えてくださいました。

この柔軟かつしなやかな考えが、新しいものを生み出す発想力とエネルギーになっているのだと感じました。

そして今回、東京手仕事で新しく生み出された商品がこちら。

「monpluie bouge」令和4年度東京手仕事プロジェクト東京都知事賞を受賞。

広げると内側にプリントされたパリの街並みが楽しめるようになっています。
「bouge」はフランス語で「移動」の意。
晴雨兼用のこの傘には、「雨の日も晴れの日も移動を楽しんでもらいたい」という山口さんの想いが詰まっています。

まるでパリの街を散歩しているようなステキな気分。
濡れた傘を収納できる傘袋と、スマホやお財布が入る使いやすいサイズのプチバッグが付属されています。
これなら雨の日のお出かけも楽しみになりますね!

左:先代のデザイン「自転車」 右:山口さんお気に入りの「monpluie bougeパリ(ピンク)」

今回、お話しを通して感じたのは、山口さんの明るいお人柄と、そして柔軟さ。
伝統を受け継ぎ守りつつ、新しいことへも挑戦する。
こうでなければいけない。ではなく、いいものはいい。と言い切れる強さとしなやかさ。
これからの山口さんのモノづくりがどう変化していくのか、とても楽しみになりました。

日本百貨店にほんばし總本店では、モンブランの傘を多数お取り扱いしています。山口さんの人柄をそのまま映し出したような、明るく華やかな傘もたくさん。
是非、お気に入りの一点を探しにご来店ください。

東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。