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東京手仕事

2022.09.16

東京のスグレモノと作り手たち2022 vol.1|正次郎鋏刃物工芸

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東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!

初めまして!日本百貨店にほんばし總本店スタッフの齊藤です。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」取材の第一弾として、正次郎鋏刃物工芸さんにお伺いしました。

伝統技法の「総火造り」

正次郎鋏刃物工芸さんは平成2年に東京都伝統工芸士に認定された東京打刃物の作り手さん。鋼と軟鉄をあわせた鉄を、型打ちではなく自らの手で叩くことによって形を作り上げる「総火造り」という技法を用いて包丁や裁ち鋏を作っています。

「正次郎」とは個人名ではなく、工房の長が代々受け継ぐ称号。歴史は江戸時代まで遡るほど古く、初代は日本刀を造る刀匠でした。二代目以降はその日本刀を造る技術に加え、鋏を造る技術なども受け継ぎ、他にはない刃物工房として現在の六代目に至ります。
今回はそんな正次郎鋏刃物工芸の六代目、石塚祥二朗さんにお話をお伺いしました。

いざ!工房へ

真夏の灼熱の陽射しのなか、千葉県成田市にある工房に到着。
現在は五代目正次郎であるお父さま、包丁の柄付けを担当するお母さま、奥さまの4人で工房を切り盛りされています。

さっそく工房の中に入ると、材料となる鋼や軟鉄、見たことのない機材がたくさん積まれており、日常にはない光景にテンションが上がってきました!

建物の中はとても綺麗ですが、昭和38年に建てられた建物を修繕しながら使っているそう。いいものを長く、直しながら使っている姿に、長く使えるものづくりをされている姿がリンクしました。

六代目正次郎の石塚さん。20代のころは某大手自動車メーカーの会社で営業職をされていたそう。その後、お父さまの背中に憧れ、ものづくりの世界に飛び込むことを決意し、弟子入りされたのだとか。

今回は工房で作られる数々の打刃物の中でも、最も身近なもの、包丁の製作工程を見学させていただきました。
包丁が造られるまでの様々な工程を、丁寧に説明くださる石塚さん。石塚さんの一番好きな作業は、総火造りにおいて花形ともいえる焼き入れとのこと。

鋼と軟鉄を接着させるための粉。この粉を作っているメーカーさんも昨年引退されてしまい、今では希少な品。

 

「形のないところから形を作る工程が一番楽しい」

総火造りで造られる刃物は薄いのが特徴。この行程で何度も何度も鉄を鍛えることによって、余分な厚みをなくし、格段に優れたコシと粘りを持たせます。長い間切れ味が続く、耐久性に富んだ上質な刃物ができあがります。

新しい金槌と、長年使い込んだ金槌。

そんな憧れの行程に私たちも挑戦!
石塚さんは金槌を数回打つだけでどんどん形が出来上がっていくのですが、私たちが何度打っても何も変わらず…。金槌はとても重く、振るだけでも精一杯、雲泥の差でした。これぞ職人技!

工房では包丁のオーダーメイドも受けています。お客様からは複雑でユニークな要望もたくさんあるそう。
「要望が多い方がやりがいもある。絶対無理とは言いたくない!」そうおっしゃる石塚さんは、いつものお茶目な笑みをたたえつつ、その目には職人魂をメラメラと燃やしていました。

五代目正次郎、洋一郎さん登場!

この日は五代目正次郎、石塚洋一郎さんにもお目にかかることができました!

黙々と作業される背中がかっこいい。

洋一郎さんはなんと御年83歳!この日されていたのは刃を削る作業。グラインダーで削っては確認し、何度も何度も調整を重ねることで徐々に均一にしていきます。
洋一郎さんが調整するたびに見せてくださるものの、私にはさっぱり違いが分からず。分かるようになるには長年の経験が不可欠とのこと。

職人さんのご自宅で使われている包丁とは…?

「包丁を造る職人さんが家で使っているものってどんな包丁だろう?」
ということで、奥様の利恵さんご愛用の包丁も見せていただきました。
利恵さんの包丁は、木の柄などを取り付けずに鉄のまま仕上げた共柄の包丁。

利恵さんは「工房に落ちていたのを拾って使っているのよ~!」なんて朗らかに笑いますが、左利きの利恵さんが握りやすいように、あえて持ち手を右曲がりにうねりをつけてつくっているそうです。使う人それぞれの個性に合わせて加工できるのも共柄の特徴です。

石塚家のアイドル!

工房には石塚家の愛犬、ロンちゃんも登場!そのかわいさに一同メロメロ。
石塚さんの一番の幸せ時間は、ロンちゃんと一緒にゴロゴロするひとときなのだとか。

石塚さんご一家のモノヅクリに対する真摯な姿勢、使い手への思いやり、やわらかなお人柄をそのまま写し取ったような数々の刃物たち。

そんな正次郎鋏刃物工芸さんの商品を直接ご覧になりたい方は、ぜひにほんばし總本店へ。
共柄や竹柄の包丁や裁ち鋏など様々な商品を取り扱うほか、定期的に包丁研ぎイベントやオーダー会なども開催しています。
職人が一本一本その技術の粋を集めて造る、一生ものの包丁を手に入れてみてはいかがでしょうか。

東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。