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バイヤー日暮日記

2022.08.30

オトナになれば/梅月堂@鹿児島

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バイヤー日暮日記

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こんにちは!日本百貨店バイヤーのヒグラシです。
仕事柄全国いろんなところに行くことが多いのですが、巷では「アイツただフラフラしてるだけなんじゃないのか」という声も…
そんな疑惑を払拭すべく、このコラムでは行く先々で出会った素晴らしい作り手さんやものづくりの裏側なんかをゆるりと紹介しつつ、ちゃんと仕事している感を演出したいと思います!

オトナの、どら焼き。

オトナってなんでしょうね。

若い頃は歳を重ねるごとに勝手にナイスなオトナになっていくと思っていましたが、現実はそうはいかないですね。年齢的にはもうすっかりオジサンになっているのですが、実際の生活はなかなか思い描いていたオトナからは程遠いものです…

つい先日も社長との出張に飛行機の出発30分前に起きるという大失態を起こしまして。諦めてあれこれと言い訳を考えたり、いっそ「それはあれだ!夏のせい!」とか言って逃げようかとも考えたのですが、なんと機材トラブルか何かで出発が遅れ、さらに泣きの保安検査場で何とか通してもらい、結果間に合うというミラクルがあったのですが、流石に反省しました…

「オジサンだけどオトナではない」、なんて格言みたいに言ってみても虚しい感じのする今日この頃です。

なぜこんなことを考えているのかと言いますと、今回取材に伺ったのは鹿児島にある老舗和菓子屋の梅月堂さん。名物のラムレーズンが入っているオトナのどら焼き、「ラムドラ」はご存知の方も多いのではないでしょうか。

あんこ×ラムレーズン!?意外すぎる組合せが見事にマッチした大人気のどら焼き

職人が1枚1枚手焼きした生地に、北海道産の大納言小豆を炊いた餡と、マイヤーズのダークラムで漬けた自家製ラムレーズンをサンド。しっとりとした生地、ほのかにバター香る小豆餡、そしてラム酒の芳醇な香りが漂う…なんともオトナな味わいのどら焼きです。日本百貨店でも超が付く人気商品で一時は入荷すると即売り切れという状態が続いていました。

梅月堂さんとはもう7年近くのお付き合いになりますが、今回、なんと敬老の日に合わせて日本百貨店オリジナル仕様の詰合せをオンラインショップにて販売することが決定!(詳細はコチラ)その打合せもかねてお邪魔してきました〜。

「真面目さ」と「発明」でつくりだす新しい和菓

鹿児島県日置市の湯之元という温泉街の一角にお店はあります

梅月堂は大正10年創業の老舗和菓子店。大正デモクラシーや大正浪漫。伝統と革新が入り混じった創業時の時代の雰囲気を表すかのような、守るべきは守りつつも自由な感性で新しい和菓子を作り出しています。先祖代々受け継がれているスピリットは「真面目さ」と「発明」だそう。かっこいい…

山椒の葉を丸ごとのせて焼き上げた「湯之元せんべい」は鹿児島県民に長く愛されています

案内してくれたのは4代目の石原社長。ラムドラの産みの親です。3代目の急逝に伴い、東京より帰郷し、跡を継いだのが約10年ほど前。当時は全盛期の売上の半分程度に落ち込んでいた厳しい状況のなか、定番商品だった「ぬれどら焼き」をリニューアルし注目を集め、さらにスター商品「ラムドラ」を世に送り出した凄腕社長!

会うたびに思うのですが、物腰柔らかでキチンとしていて凄く良い人なんです。とてもあんこにラムレーズンを入れちゃう人には見えないんですよね。笑
今回も急なお願いにも関わらず、丁寧に3時間も案内してくれて本当に感謝です!

照れ気味の石原さん。呑んべえみたいになっていますが、持っているのは隠し味に使用している鹿児島の伝統酒

職人泣かせのどら焼き

梅月堂のどら焼きといえば皮が最大の特徴。今でも職人が一枚一枚手焼きしている皮は、薄皮でとてもしっとりしているんですね。ただ焼き上げるのが難しく「職人泣かせのどら焼き」と言われているそう。過去にはうまく焼くことが出来ずに和菓子職人を断念する者や、勝手に焼きやすいように配合を変えて怒られる者までいたという。

ベテラン職人「しもさん」が焼く皮は色味が本当にキレイ

ということで早速ヒグラシも皮焼きにチャレンジさせてもらいましたっ!

心の乱れを感じますね…1番下のは見本です…

実は梅月堂さんに訪れるのが今回で3回目でして、皮焼きにトライするのもこれが3回目なのですが全く上達してないですね…配合を勝手に変えてしまった人の気持ちが痛いほど分かります。

コチラは5年前の写真

もちろん皮だけじゃなく餡にもこだわりがいっぱい。北海道産の大納言小豆のみを使っているのですが、製餡所が使うような特別な釜で炊いているんですよね。これは梅月堂さんのような小さな和菓子屋さんではまずないこと。かなり高価な釜だそうですが、味がよくなるからと思い切って導入!ふっくら香り豊かな餡に仕上げています。

この辺りがとても石原さんらしい。手焼きにこだわる一方で、最新の設備や技術は積極的に取り入れる。何でもかんでも手作りに固執するのではなく、本当に職人の勘が必要なところだけを集中して深掘りしていく。そんな柔軟性が梅月堂の文化そのもの!

そしてラムレーズンも自家製。市販のものをいくつも取り寄せて試したそうですが、どれも甘すぎるものばかり。石原さんが求めていたスッキリとした辛口のものがなかったので、自ら仕込むようになったそう。

自家製ラムレーズンを一粒一粒、丁寧に乗せていく

ラムドラはパッケージも素敵なんですよね。紫の下地に金の箔押しで「ラムドラ」の文字…なんだかイヤらしくないですか!?実は昭和のバーやキャバレーをイメージしているんですって。というのも梅月堂のある湯之元は、今から30〜40年前は温泉客で賑わい、芸者さんもたくさんいて街には映画館まであったそうな。ビロードの絨毯やシャンデリアをイメージさせる艶っぽいオトナなデザインですよね。

お子様は、オトナになってから

ラムドラ誕生秘話

ところで、何でどら焼きにラムレーズンを入れるアイデアが浮かんだのか、聞いてみました。当時、休みなく働いていた石原社長と奥さんの唯一の息抜きは、仕事帰りに自宅の駐車場に車を停めて車内で一杯やること。缶ビール片手にその日の出来事や今後のことなど色々と話し合ったそう。ある日、新商品の話題になり、あんバターどら焼きを考えていたところ、お酒好きな石原社長が、ふと「ラムレーズン入れてみよっか」と思いついたのがきっかけだそうです。

なんか、良いですよね。今じゃ都内百貨店にも並び、数々のメディアや雑誌で取り上げられるほど有名になったラムドラですが、きっかけは真夜中の駐車場での会話だなんて、素敵な話だなって思います。

次はどんな新商品が駐車場から生まれるのだろうか。そんなことを思いながら、深夜。ラムドラに濃いめのコーヒーを合わせてオトナなひとときを過ごしています。(ホントはコラムの締切が迫っていて眠れないのは内緒の話です…)

夢で見たようなオトナって感じ?ちょっとわかってきたみたい♪

なんて思ったり。ではまた今度!

恒例の集合写真

今回のバイヤー一押し!

梅月堂×日本百貨店 贅沢3種詰め合わせギフト6個入り(送料込み)¥3,500

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梅月堂×日本百貨店 贅沢3種詰め合わせギフト12個入り(送料込み)¥6,500

6個じゃ物足りないという貴方へ!12個入の欲張りセットもご用意しています!!

文文

日暮 学日本百貨店バイヤー

大型店「日本百貨店しょくひんかん」の立上げや、旗艦店となる「日本百貨店にほんばし總本店」をはじめ各店のMDを監修。売場に合わせた商品仕入やオリジナル商品の開発を行う。ニッポン各地の「スグレモノ」を発掘するため全国を飛び回る日々。

日本百貨店バイヤー日暮学が出会った日本の“いろいろ”や、ものづくりの裏側、作り手のこだわりなどをピックアップ!ニッポンのスグレモノを見つけるべく全国各地を奔走するバイヤーの日々の日記です。

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