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東京手仕事

2022.11.14

東京のスグレモノと作り手たち2022 vol.5|株式会社清水硝子

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東京の伝統工芸品の魅力を広く伝えるため立ち上げられた「東京手仕事プロジェクト」。そこには、受け継いだ匠の技を活かし、スグレモノを生み出し続けるたくさんの作り手たちの姿があります。
「東京のスグレモノと作り手たち2022」では、東京手仕事プロジェクトで認定された作り手さんの工房にスタッフが直接お伺いし、「東京手仕事」の魅力をたっぷりと紹介していきます!

にほんばし総本店スタッフの齊藤です。
今回訪れたのは、1923年創業、来年で100周年を迎える「株式会社清水硝子」さん。江戸切子工房の中でも数少ない、戦前に創業された工房の一つです。

初代の清水直次郎氏が墨田区本所で創業後、1948年に葛飾区堀切に移転。
生活様式の洋風化が進む中で、大手メーカーの協力会社として、長年にわたりグラスや花瓶などの様々な切子を製作し、カット研磨技術を培ってきました。
現在も自社オリジナルの切子グラスを中心に、東京スカイツリー(R)や東京駅などの建築物の装飾品、企業やコンテンツとコラボしたオーダーメイド商品まで、幅広く江戸切子の製作をおこなっています。

移転してきた頃の堀切は、映画に出てくるような「東京の下町」といった風情で、町のあちこちから型抜きやおもちゃの部品を作る町工場の音がいつも響いていたそう。
今は宅地開発され、一般の住宅が立ち並んでいますが、そこかしこにその頃の雰囲気を残していて、清水硝子もそんな懐かしさを感じるような工房です。

あらゆる感性を集めて

今回お話を伺ったのは、三代目の清水三千代さんと長男の祐一郎さん。

三千代さんは二代目だったお父様と職人だったご主人をたて続けに亡くされ、思いがけず三代目として会社を継ぐことになったのだとか。
当時はまだ女性経営者は珍しく、ご苦労も多かったのでは?と思いましたが、
「私は周りに恵まれました。前工場長や職人たち、仕事をいただいた方々のおかげです。」
と笑顔で話す三千代さん。

高度経済成長によるモノヅクリの大量生産への移行、バブル崩壊による需要の低下など、時代の荒波に揉まれながらも手作りにこだわるスタイルを守っていくには、引退された前工場長や、職人さんたちの力が欠かせなかったそうです。
現在清水硝子で働く職人さんは6人。職人歴50余年の大ベテランから若手まで、様々な感性の職人さんが日々ガラス製作に携わっています。
うち4人は女性。女性が活躍する工房でもあります。

「大皿や大きな花瓶といった重いものが多かった時代は男性職人が製作の主力でしたが、現在は女性職人のデザインやアイディアで作られた商品もたくさんあるんです。」
さまざまな感性が溶け合って生まれたデザインと、それを実現する熟練した技術。
たくさん並んだ優美な切子グラスの中に、工房が一つになって新しいものを生み出していく、清水硝子の底力のようなものを感じました。

使う人に寄り添うこと。

清水硝子が大切にしていることのひとつが、依頼主の声を尊重すること。
時代の変化に伴い、今や食器の枠を超えたものも多い江戸切子。清水硝子には、企業や個人のお客様から、あらゆる要望を含んだ注文が舞い込みます。

「むずかしい注文が来ても、すぐに無理だと言わずに、まずは依頼主の要望に添えるようにお話を伺います。」
と祐一郎さん。 相手の想いに丁寧に応えるモノヅクリの姿勢が、多岐にわたる商品に体現されているのを感じました。

もうひとつは、実際に使ってもらえるような商品づくり。
「ものは使ってこそ。大事にされすぎて、飾りになってしまったり、しまい込まれたりするようなことになってしまうよりも、やっぱり、実際に使ってもらえることが一番。」
と話す三千代さん。
モノとして美しく仕上げるだけではなく、実際に使った時にはじめて完成する美しさを目指して、シンプルなデザインを心がけているそうです。

お酒をたのしむだけでなく、アイスコーヒーやジュースなど、様々なシーンで活躍するサイズ。令和4年度東京手仕事プロジェクト開発商品のタンブラーは、「交互縞」と「七」の二種類。カラーはブルー、ピンク、クリアの3色です。

いずれも伝統的なカットで仕上げられているのに、現代の日常に馴染むすっきりとしたデザインです。

グラスの底を上からのぞくと、万華鏡のように浮かび上がる美しい文様。潔さの中に切子ならではの優美さを兼ね備えています。右はロックグラス版。
「このグラスで何を飲もう?」見ているとわくわくするような、使ってこそ楽しめるグラスです。

工房に響く、モノヅクリの音。

祐一郎さんが工房を案内してくださいました。

工房には真剣なまなざしで黙々と作業する職人さんたちの姿が。
ひとつひとつの作業に集中されているのが肌から伝わってくるような空気の中、ガラスを研磨する音、工具を調整する音、様々な音が響いています。
かつてこんな音が町中に響くなかで、日本のモノヅクリの礎が築かれていったんだな…と、感慨深いものがありました。

元の素材を無駄にすることなく、それぞれの個性を活かしたり補ったりするのが技術です、と語る祐一郎さん。

たいへんな苦労を乗り越えてきたからこそ持てる強さ。相手に寄り添い様々な要望に応える対応力。
これまでの100年間の蓄積のすべてが、清水硝子の現代の生活にあったモノヅクリにつながっているのだと感じました。
これからの100年も、とっても楽しみです。

日本百貨店にほんばし總本店では、清水硝子の商品をお取り扱いしています。職人の手仕事による美しい仕上がりを、是非お手にとって、感じてみてください。

東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力 を国内はもとより世界に発信していく取り組みです。